平成30年版 消防白書

2.政府の主な動き及び消防機関等の活動

(1)政府の主な動き

政府においては、6月18日7時58分の地震発生後、直ちに官邸対策室を設置するとともに、8時03分には内閣総理大臣から関係省庁に対して、<1>早急に被害状況を把握すること、<2>地方自治体とも緊密に連携し、政府一体となって、被災者の救命・救助等の災害応急対策に全力で取り組むこと、<3>国民に対し、避難や被害等に関する情報提供を適時的確に行うこと、との指示が出された。
また、8時20分に関係省庁の局長級で構成される緊急参集チーム協議が開催され、関係省庁間で被害状況等の情報が共有された。
その後、12時00分に内閣府情報先遣チームが大阪府庁に向けて出発するとともに、16時28分に関係省庁局長級会議が、17時40分に関係閣僚会議が開催され、被災自治体と緊密に連携して災害応急対策に万全を期すこととされた。
また、地震発生3日後の21日には、内閣総理大臣及び内閣府特命担当大臣(防災)が大阪府を訪問し、高槻市や茨木市などの被災現場を視察した。

(2)消防庁の対応

消防庁においては、6月18日7時58分の地震発生と同時に、消防庁長官を長とする消防庁災害対策本部(第3次応急体制)を設置し、震度5弱以上を観測した滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県及び奈良県に対して、適切な対応と迅速な被害報告について要請するとともに、同じく震度5弱以上を観測した消防本部及び市町村に直接問い合せ、被害状況の把握に努めた。
また、最大震度6弱を記録し、緊急消防援助隊の応援等の要請等に関する要綱第26条に定める迅速出動の適用条件に該当したため、消防庁長官は、消防組織法第44条第2項の規定に基づき、被害の状況を把握するため、同日9時15分に兵庫県知事に対して、9時45分に京都府知事に対して、緊急消防援助隊(航空小隊)の大阪府への出動を求めた(緊急消防援助隊の活動等の詳細については(5)に記載)。
あわせて、被災自治体の災害対応を支援するとともに、緊急消防援助隊の円滑な活動調整、更には政府の災害対応に必要となる情報を収集するため、同日、消防庁職員2人を大阪府に、1人を大阪市消防局に派遣した。
また、大阪府及び京都府等に対し「大規模地震発生後の危険物施設の安全確保について」(平成30年6月19日付け消防危第114号消防庁危険物保安室長通知)を発出して、地震の影響が大きかった地域に存する危険物施設の保有事業者に対して、安全確保に関する指導の徹底を求めるとともに、各都道府県に対し「大阪府北部を震源とする地震及び平成30年7月豪雨に係る救助活動等に従事した消防職団員の惨事ストレス対策等について」(平成30年7月12日付け消防庁消防・救急課、消防庁国民保護・防災部地域防災室事務連絡)を発出し、緊急時メンタルサポートチームを必要に応じて活用するよう周知した。
このほか、今回の地震により、踏切が長時間遮断され、緊急車両の通行に支障を来す事例が発生したことを踏まえ、各都道府県に対し「災害発生時の踏切長時間遮断に係る緊急車両の運行に関する対応について」(平成30年11月5日付け消防消第294号消防庁消防・救急課長通知)を発出して、災害発生時に優先して速やかに開放する踏切の指定に関し、関係する警察や消防機関、鉄道事業者が協議を行うなど、適切に対応するよう求めた。

(3)被災自治体の対応

6月18日7時58分の地震発生と同時に、大阪府において災害対策本部が、京都府、兵庫県及び奈良県において災害警戒本部が設置されたほか、8時00分に滋賀県に災害警戒本部が、9時10分に三重県で災害対策本部が設置され、10時00分には京都府の災害警戒本部が災害対策本部へと改組された。
また、大阪府においては、同日12時00分に自衛隊に対して、災害派遣を要請するとともに、同日、12市1町(大阪市、豊中市、吹田市、高槻市、守口市、枚方市、茨木市、寝屋川市、箕面市、摂津市、四條畷市、交野市及び三島郡島本町)に対する災害救助法の適用を決定した。

(4)消防本部及び消防団の対応

ア 消防本部

被災地の消防本部には、地震発生直後から多数の119番通報が入電し、各消防本部は直ちに消火、救助、救急活動にあたったが、市街地では踏切の遮断等による交通渋滞が発生し、目的地への到着に時間を要するなど、その活動は困難を極めた。 また、地震発生直後には、各地でエレベーターによる閉じ込め事案が多数発生したほか、この地震により大阪市で3件、兵庫県尼崎市で4件の火災が発生したが、地元消防本部による懸命な消火活動によって、延焼等の被害拡大には至らなかった。

イ 消防団

被災地において、消防団は、地震発生直後から、地域の安心・安全を守るため、消火活動や巡回活動、地震で倒壊したブロック塀等の撤去作業、道路啓開等を実施した。
また、被災地では、消防団が発災当初から、住民の救助活動や避難誘導、行方不明者の捜索等を行ったほか、土砂等の撤去作業や地域の巡回活動、土砂災害のおそれがある危険箇所の警戒活動等を長期間にわたり実施した。
そのような中、呉市においては、活動中の消防団員1人が土石流に巻き込まれて犠牲となった。

(5)緊急消防援助隊の活動

消防組織法第44条第2項の規定による消防庁長官の求めを受けた京都市消防航空隊及び兵庫県消防防災航空隊が緊急消防援助隊として大阪府に出動し、ヘリコプターテレビ電送システムを活用し、大阪府北部を中心に被害状況を把握する等、情報収集活動を行った。

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