平成30年版 消防白書

4.今後の取組

(1)広域化基本指針の改正(平成30年)

広域化を実現した消防本部では、人員配備の効率化と充実、消防体制の基盤強化を通じた住民サービスの向上等の成果が現れている状況にある。
しかしながら、消防の広域化の進捗は未だ十分とはいえず、今後の人口減少社会の本格化や、高齢化の進展等に鑑みると、消防力の維持・強化に当たって最も有効な手段である消防の広域化を推進し、小規模消防本部の体制強化を図ることがこれまで以上に必要になっている。
そのため、消防庁では、第28次消防審議会の答申等も踏まえ、平成30年4月1日に広域化基本指針を改正し、広域化の推進期限を平成36年4月1日まで延長した(連携・協力基本指針も併せて改正し、その推進期限も同日に延長した。)。主な改正項目は下表のとおりである(特集4-1表)。

特集4-1表 広域化基本指針の改正概要

特集4-1表 広域化基本指針の改正概要

延長した6年間のうち、初年度である平成30年度は、地域で消防体制のあり方を考える期間としており、市町村の消防本部においては「消防力カード」を作成し、自らの消防力や広域化の必要性を分析・検討し、都道府県においては、積極的にリーダーシップを発揮し、消防力カード等の情報を基に、消防本部、市町村と緊密に連携し、推進計画を再策定することとしている。(特集4-4図)。
なお、平成36年前後は、消防指令センターの更新時期がピークに差し掛かるため、これを契機とした広域化を後押しすることも見据えて推進期限を設定した。

特集4-4図 消防の広域化の推進期限延長の考え方

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特集4-4図 消防の広域化の推進期限延長の考え方

また、連携・協力のうち、指令の共同運用については、<1>現場に最先着できる隊に自動で出動指令を行ういわゆる「直近指令」や、出動可能な隊がなくなった場合に指令の共同運用をしている他消防本部の隊に自動で出動指令を行ういわゆる「ゼロ隊運用」などの高度な運用により、区域内の消防力を向上させる効果が大きいこと、<2>その運用に際して人事交流が生まれるなど消防本部間の垣根を低くする効果もあり、消防の広域化につながる効果が特に大きいことから、広域化の推進と併せて、積極的に検討することとしている。

(2)広域化に関する課題への対応

消防の広域化に当たっては、大規模な消防本部からは消防力の流出に対する懸念、小規模な消防本部からは周辺地域となることによる消防力の低下に関する懸念が示され、また、職員の処遇の統一も課題として挙げられることがある。
しかしながら、消防力の配置は、管内の実情に応じて行うものであるので、消防の広域化が消防力の流出や低下につながるものではなく、また、職員の処遇の統一等についても段階的に調整を行うなど、柔軟に対応することが可能である。
都道府県が推進する必要があると認める自主的な市町村の消防の広域化の対象となる市町村(以下「広域化対象市町村」という。)が広域化後に円滑に事務を行うことができるよう、広域消防運営計画作成時に各調整事項について十分な協議を行うとともに、構成市町村の了承を得ておくことが必要である。

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