平成30年版 消防白書

特集5 消防団を中核とした地域防災力の充実強化

1.消防団の現状

火災の発生に加え、大阪府北部を震源とする地震や、平成30年7月豪雨、平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震など、全国各地で地震や風水害等の大規模災害が発生した際に、多くの消防団員が出動してきた。消防団員は、災害防ぎょや住民の避難支援、被災者の救出・救助等の活動を行い、大きな成果を上げており、地域住民からも高い期待が寄せられている。 また、将来的に、南海トラフ地震や首都直下地震等の大規模地震の発生が懸念されており、消防団を中核とした地域の総合的な防災力の向上が求められている。さらに、テロ災害等の発生時において、消防団は避難住民の誘導等の役割を担うこととされている。
このように、地域における消防防災体制の中核的存在として、地域住民の安心・安全の確保のために消防団が果たす役割はますます大きくなっている。
消防庁においては、平成25年12月に成立した「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」(平成25年法律第110号。以下「消防団等充実強化法」という。)を受け、消防団への加入促進、消防団員の処遇改善、消防団の装備・教育訓練の充実等に取り組んでいる。

(1)消防団員数の減少

消防団員数は年々減少しており、平成30年4月1日現在、前年に比べ6,664人減少し、84万3,667人*1となっている(特集5-1図)。消防団は地域の消防防災体制の中核であることから、消防庁では、消防団等充実強化法等を踏まえ、今後さらに、消防団員の確保に向けた取組を推進する必要がある。

特集5-1図 消防団員数及び被雇用者である消防団員の割合の推移

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特集5-1図 消防団員数及び被雇用者である消防団員の割合の推移

(備考)「消防防災・震災対策現況調査」により作成

*1 第2章第1節を参照

(2)被雇用者である消防団員の割合の増加

被雇用者である消防団員の全消防団員に占める割合は、平成30年4月1日現在、前年に比べ0.4ポイント増加し73.6%となっており、高い水準で推移している。(特集5-1図)。

(3)消防団員の平均年齢の上昇

消防団員の平均年齢は、平成30年4月1日現在、前年に比べ0.4歳上昇し、41.2歳となっており、毎年少しずつではあるが、消防団員の平均年齢が上昇している(特集5-2図)。

特集5-2図 消防団員の年齢構成比率の推移

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特集5-2図 消防団員の年齢構成比率の推移

(備考)
1 消防防災・震災対策現況調査」により作成
2 昭和40年、昭和50年は「60歳以上」の統計が存在しない。また、昭和40年は平均年齢の統計が存在しない。

(4)女性消防団員の増加

近年、地域の安心・安全の確保に対する住民の関心の高まり等を背景に消防団活動も多様化している。災害での消火活動や後方支援活動等をはじめ、住宅用火災警報器の設置促進、火災予防の普及啓発、住民に対する防災教育・応急手当指導等、広範囲にわたり、女性消防団員の活躍が期待されている。
こうした状況の中で、女性消防団員の数は、平成30年4月1日現在、前年に比べ1,034人増加し、2万5,981人となっている。消防団員の総数が減少する中、女性消防団員の数は年々増加しており(特集5-3図)、女性消防団員がいる消防団の割合は、同日現在で、71.2%となっている。

特集5-3図 女性消防団員数の推移

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特集5-3図 女性消防団員数の推移

(備考)「消防防災・震災対策現況調査」により作成

(5)学生消防団員の増加

学生消防団員とは、大学生、大学院生又は専門学校生等の消防団員を指す。平成30年4月1日現在の学生消防団員の数は、前年に比べ567人増加し、4,562人となっている。消防団員の総数が減少する中、学生消防団員の数は年々増加している(特集5-4図)。
長期的に消防団員を確保していくためには若い人材の確保が重要であり、大学生等の若者が消防団活動に参加し、消防や地域防災に関心を持つことにより、卒業後においても地域防災の担い手となることが期待されている。

特集5-4図 学生消防団員数の推移

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特集5-4図 学生消防団員数の推移

(備考)「消防防災・震災対策現況調査」により作成

(6)機能別消防団員の増加

機能別消防団員とは、一般的な消防団員とは異なり、入団時に決めた特定の活動・役割を担う消防団員である。例えば、一般的な消防団員のみでは人員不足が生じるような大規模災害に限り、避難誘導や避難所の運営支援等の活動のみを担う「大規模災害団員」(2.(5)を参照)や、事業所の従業員が当該事業所に勤務する時間に限り、消防団員として火災や災害が発生した場合の後方支援活動に携わる場合が挙げられる。
平成30年4月1日現在の機能別消防団員の数は、前年に比べ2,040人増加し、2万1,044人となっている(特集5-5図)。一般的な消防団員の数が減少する中、機能別消防団員の数は年々増加している。社会環境の変化や災害の大規模化等を踏まえ、一般的な消防団員を補完する点で、機能別消防団員制度を地域の実情に応じ採用することが期待されている。

特集5-5図 機能別消防団員数の推移

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特集5-5図 機能別消防団員数の推移

(備考)「消防団の組織概要等に関する調査」により作成

(7)消防団の装備・教育訓練の充実等に関する必要性の高まり

近年の大規模災害において、消防団員は、消火・応急手当・救助活動はもとより、水門閉鎖や住民の避難誘導・避難所の運営支援など、実に様々な活動に取り組んでいる。このような中、とりわけ被災地の消防団を中心に、被害の軽減及び消防団員の活動等における安全対策の強化に資する装備の一層の充実強化や、平素からの教育訓練の更なる充実を図る必要性が高まっている。

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