平成30年版 消防白書

特集8 AIやロボット等を活用した消防防災体制の充実

1.消防防災技術に係る研究開発の方向性

(1)消防防災科学技術高度化戦略プラン2018

我が国の消防は、地域に密着した自治体消防として発足し、以来、関係者のたゆまぬ努力の積み重ねにより、制度、組織・体制、施設・資機材等の充実強化が図られ、火災の予防、警防はもとより、救急、救助から地震、風水害、国民保護等への対応まで幅広い分野にわたり、国民生活の安心・安全の確保に大きな役割を果たしてきた。
今後発生が予測されている南海トラフ地震や首都直下地震をはじめとする地震災害に備えるとともに、近年相次いで発生している集中豪雨・台風等の自然災害がもたらす被害を軽減するため、消防防災の科学技術を活用した対応策は重要である。
さらに、高齢化・人口減少に代表される社会構造の大きな変化、エネルギー事情の変化等消防を取り巻く環境の変化や課題に科学技術の側面からも的確に対応する必要がある。
以上のように、消防防災に対する新たな課題は大きくかつ多岐にわたり顕在化してきており、今後、これらの課題に積極的に対応し、国民生活の安心・安全を確保していく上で、消防防災分野における科学技術の果たす役割はますます重要となっている。
消防庁では、研究開発等に係る中期的なマスタープランとして「消防防災科学技術高度化戦略プラン」を策定し、概ね5年ごとに改訂している。平成30年3月に改訂した「消防防災科学技術高度化戦略プラン2018」においては、上記を踏まえ、自然災害リスクの増大や社会の脆弱化への対応に加え、研究成果の社会実装の推進を主眼としている。

(2)統合イノベーション戦略等を踏まえた対応

我が国全体の科学技術政策の中期的なマスタープランである「科学技術基本計画」を踏まえ、政府において科学技術のイノベーションに関する総合戦略が毎年策定されており、直近では平成30年6月15日に「統合イノベーション戦略」が閣議決定されている。同戦略においては、Society5.0*1の実現のため、AIやロボット等についてイノベーションに資する研究開発を推進するとともに、研究成果の社会実装化を推進していくこととされている。
消防庁では、以上を踏まえ、消防防災行政に係る課題解決や重要施策推進のための「消防防災科学技術研究推進制度」(以下、本特集において「競争的資金」という。)における研究課題としてAIやロボット等に関連した案件を重点的に採択するとともに、研究成果の社会実装化を推進していく。

1 サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会の課題解決を目指す社会

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