令和3年版 消防白書

2.津波避難の実効性の確保

平成23年3月の東日本大震災における津波による甚大な被害を踏まえて同年制定された津波防災地域づくりに関する法律に基づき、市町村においては避難施設の整備等について定めた推進計画を作成できることとされている。また、同年制定された津波対策の推進に関する法律に基づき、地方公共団体においては、住民等の避難の実効性を確保するための津波避難計画を作成するよう努めることとされている。
地方公共団体においては、これらの計画に基づき、津波避難タワーや避難路・避難階段等の整備、避難訓練の実施等が求められる。
こうした取組を支援できるよう、津波避難計画の作成状況等について実態を把握するとともに、施設整備に必要な地方債等の地方財政措置を講じる等、引き続き津波避難の実効性確保に取り組む。

(1)津波避難計画の策定の促進

消防庁では、津波による人的被害を軽減するため、避難対象地域の指定、津波情報の収集・伝達や避難指示の発令手順等を津波避難計画として定めるよう関係地方公共団体に要請している。
令和2年12月1日現在の調査結果では、津波避難計画の策定対象市町村(675団体)のうち、策定済の市町村は99.4%(671団体)であった。

(2)津波避難のために必要な取組の促進

令和3年3月20日に発生した宮城県沖を震源とする地震では、宮城県沿岸市町村に津波注意報が発表された。関係市町村では避難指示を発令するなどの対応が行われ、津波注意報発表時の避難行動を促進させることの重要性が再認識された。
このことから消防庁では、津波による被害が想定される地方公共団体に対し、同年6月に通知を発出し次の事項について取り組むよう要請した。
ア 避難対象地域における必要な対策の実施(津波避難タワー等の整備、自動車による避難が必要な場合を想定した安全かつ確実な避難方策の検討)
イ 津波警報等の住民への適切な伝達
ウ 避難指示の発令基準の適切な設定
エ 津波避難訓練の実施

(3)津波避難施設の整備に係る地方財政措置

地方公共団体が実施する津波避難タワーや避難路等の整備に係る費用に対しては、「緊急防災・減災事業債」による財政措置を講じている。

関連リンク

はじめに
はじめに 昨年は、静岡県熱海市土石流災害や8月11日からの大雨などの自然災害に見舞われ、多くの人的・物的被害が生じました。 また、新型コロナウイルス感染症への対応として、救急隊員の感染防止対策の徹底や、ワクチン接種業務への救急救命士の活用など様々な対応が求められました。 気候変動...
1.令和3年7月静岡県熱海市土石流災害による被害及び消防機関等の対応状況
特集1 最近の大規模自然災害等への対応 1.令和3年7月静岡県熱海市土石流災害による被害及び消防機関等の対応状況 (1)災害の概要 6月末から日本付近に停滞した梅雨前線の影響で、西日本から東北地方の広い範囲で大雨となり、各地で河川氾濫、浸水、土砂崩れ等が発生した。 静岡県熱海市では、降り始めから7月...
2.令和3年8月11日からの大雨による被害及び消防機関等の対応状況
2.令和3年8月11日からの大雨による被害及び消防機関等の対応状況 (1)災害の概要 ア 気象の状況 8月11日から21日にかけて、日本付近に停滞した前線に暖かく湿った空気が断続的に流れ込んだ影響で前線の活動が活発となり、西日本から東日本の広い範囲にかけて大雨となった。 特に、8月12日から14日は...
3.栃木県足利市林野火災による被害及び消防機関等の対応状況
3.栃木県足利市林野火災による被害及び消防機関等の対応状況 (1)災害の概要 ア 火災の概要 令和3年2月21日15時20分頃、栃木県足利市西宮町地内にある両崖山山頂付近の山林(通称「紫山」)から出火した。管轄の足利市消防本部は同日の15時36分に覚知し消火活動に当たったが、強風注意報が発表された2...