令和3年版 消防白書

4.情報化の最近の動向

(1)消防防災通信ネットワークの充実強化

ア 住民への災害情報伝達手段の多重化

豪雨、津波等の災害時における住民への確実な情報伝達において、①一つの手段に頼らず複数の災害情報伝達手段を組み合わせるとともに、②一つ一つの災害情報伝達手段を強靱化するため、災害情報伝達手段の多重化を促進している。このため、災害情報伝達手段の整備に関する技術的支援や助言を行うことを目的に、災害情報伝達手段に関する専門的知見を有するアドバイザーを地方公共団体へ派遣しており、令和3年度は39団体に派遣することとしている。
併せて、市町村防災行政無線(同報系)のほか、MCA陸上移動通信システム、市町村デジタル移動通信システム、FM放送、280MHz帯電気通信業務用ページャー、V-Lowマルチメディア放送を活用した同報系システムや携帯電話網を活用した情報伝達システム等、屋外スピーカーを用いて地域住民に一斉に情報伝達を行える手段の整備を促進するとともに、携帯電話等の普及を踏まえ、地域内の住民に一斉に送信できる緊急速報メール等の導入を促進してきたところである。また、津波や浸水、停電等に備え、屋外スピーカーの音達の改善や大型表示盤の設置、バッテリーの長時間化などの機能強化を行う場合に地方財政措置の対象とし、住民への防災情報の確実な伝達のための機能強化を促進している。
また、大雨の際に屋外スピーカーからの音声が聞こえにくい場合や、高齢者などの地域住民にきめ細かく情報を行き渡らせるための手段として、これらの戸別受信機等*3が非常に有効であることから、追加配備する場合の経費については特別交付税措置の対象としている。さらに、令和元年度、令和2年度第1次及び第3次の補正予算を活用し、戸別受信機等の配備が進んでいない126市町村に対しては、約4.2万台の無償貸付を行っている。これらの市町村では、単独事業による配備も行われる予定であり、消防庁からの無償貸付と合わせ、約34万台が配備されることとなる。各市町村において戸別受信機等の配備は着実に進められてきているが、近年の災害発生状況に鑑み、今後、多くの市町村において配備が進むよう、技術的・財政的な支援等について取り組むこととしている。
加えて、近年、地上デジタル放送波を活用した新しい災害情報伝達手段(以下「IPDC」という。)の技術開発が進められている状況を踏まえ、円滑な社会実装に向けて、「地上デジタル放送波を活用した災害情報伝達手段のガイドライン策定等に係る検討会」を開催し、IPDCに係る技術的知見の整理や市町村防災行政無線(同報系)との比較による耐災害性の整理等の検討を進めている。

イ 防災行政無線のデジタル化の推進

携帯電話、テレビ放送等様々な無線通信・放送分野におけるデジタル化の進展を踏まえて、防災行政無線についても、今後は文字情報や静止画像について双方向通信可能なデジタル方式に移行する等、ICTを積極的に活用することで防災情報の高度化・高機能化を図ることとしている(第2-10-6図)。

第2-10-6図 防災行政無線デジタル化の概要

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第2-10-6図 防災行政無線デジタル化の概要

(2)消防防災業務の業務・システムの最適化

消防庁における、各種システムの更改は、総務省デジタルガバメント中長期計画(2018年6月22日総務省行政情報化推進委員会決定、令和2年3月31日改定)に基づき進めている。

*3 戸別受信機等:市町村防災行政無線(同報系)の戸別受信機及びMCA陸上移動通信システム、市町村デジタル移動通信システム、FM放送、280MHz帯電気通信業務用ページャーやV-Lowマルチメディア放送を活用した同報系システムの屋内受信機(防災情報を受信して自動起動するもの)をいう。

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