令和3年版 消防白書

救急安心センター事業(♯7119)の推進

救急安心センター事業(♯7119)の概要

救急安心センター事業(♯7119)(以下「♯7119」という。)は、地域の限られた救急車を有効に活用し、緊急性の高い症状の傷病者にできるだけ早く救急車が到着できるようにすることに加え、住民が適時・適切なタイミングで医療機関を受診できるよう支援するため、消防と医療が連携し、救急医療相談と医療機関案内を短縮ダイヤル(♯7119)で行う電話相談事業である。
♯7119に寄せられた相談は、医師・看護師・相談員が対応し、病気やけがの症状を把握して、傷病の緊急性や救急車要請の要否の助言、応急手当の方法、適切な診療科目及び医療機関案内等を行っている。
令和3年10月1日現在、全国18地域(北海道札幌市周辺、宮城県、茨城県、埼玉県、東京都、神奈川県横浜市、新潟県、岐阜県岐阜市周辺、京都府、大阪府内全市町村、兵庫県神戸市周辺、奈良県、和歌山県田辺市周辺、鳥取県、広島県広島市周辺、山口県、徳島県、福岡県)で事業が実施(人口カバー率46.4%)されている(第2-5-11図)。

第2-5-11図 救急安心センター事業(♯7119)の普及状況

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第2-5-11図 救急安心センター事業(♯7119)の普及状況

導入促進及び全国展開に向けた取組

消防庁では、都道府県が、管内消防本部の意向を踏まえつつ、衛生主管部局及び医療関係者等との合意形成を図るなど、♯7119の導入に向け積極的に取り組むことを促している。
平成29年5月には、「救急安心センター事業(♯7119)普及促進アドバイザー制度」を新設し、♯7119導入のノウハウなどの幅広いアドバイスや事業実施に向けた課題解決への助言を行う取組を開始し、令和3年11月末までに、延べ18地域に39人のアドバイザーの派遣を行った。
令和2年度は、♯7119の更なる普及を進め、「日本全国どこにいても♯7119が繋がる体制」すなわち♯7119の全国展開を目指し、有識者による検討部会を開催し、精力的に議論を行った。検討部会では、未実施団体に対する実態調査や実施団体へのヒヤリング調査などを基に、未実施団体が事業導入に対して抱える課題について整理した上で、それぞれに対する解決方策がまとめられた。
これらの検討結果を踏まえ、「救急安心センター事業(♯7119)の全国展開に向けた取組について」(令和3年3月26日付け通知)を発出し、各都道府県等に対し今後の具体的な取組事項を示した。

事業の効果

従来から、消防面においては、①潜在的な重症者の発見及び救護、②軽症者の搬送割合の減少、③不急の救急出動の抑制といった効果が挙げられており、医療面においては、医療機関の負担軽減や医療費の適正化といった定量的な効果についても見いだされている。
加えて、高齢化及び人口減少の進展や地域の救急搬送・救急医療の担い手不足といった「時代の変化への的確な対応」の観点、あるいは、今般の「新型コロナウイルス感染症対策」などの観点からも、効果が期待される。(第2-5-1表)

第2-5-1表 救急安心センター事業(♯7119)の事業実施効果

第2-5-1表 救急安心センター事業(♯7119)の事業実施効果

今後の取組

検討部会での検討結果を踏まえ、管内に♯7119の未実施地域を有する都道府県を中心に、都道府県全域での♯7119の早期実施に向けて、関係者と連携した検討の着手、実施主体のあり方や都道府県と市町村の間での更なる連携方策等についての検討など、積極的に取り組むよう要請している。
財政措置のあり方に関しては、検討部会報告書において、各地域でそれぞれの実情に応じて選択された実施主体に生じる必要な財政負担に対して、「実効性ある適切な財政措置の実現を強く期待する」と結論が出されたことを受け、令和3年度からは、都道府県又は市町村における本事業実施に係る財政負担に対し、新たに特別交付税措置が講じられることとなった。加えて、♯7119に対する住民の認知・理解を図り、利用を促進するため、積極的に広報を行っており、消防庁ホームページ内に住民に向けた♯7119紹介ページを開設するとともに、ラジオ等のメディア媒体への出演による広報活動や子どもに人気の高い企業キャラクターと連携することで、幅広い層への認知を図っている。

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