令和3年版 消防白書

2.救急業務の実施体制

(1)救急業務実施市町村数

救急業務実施市町村数は、令和3年4月1日現在、1,690市町村(793市、736町、161村)となっている(東京都特別区は、1市として計上している。以下、本節において同じ。)。
98.3%(前年同数)の市町村で救急業務が実施され、全人口の99.9%(前年同数)がカバーされている(人口は、平成27年の国勢調査人口による。以下、本節において同じ。)こととなり、ほぼ全ての地域で救急業務サービスが受けられる状態となっている(資料2-5-9資料2-5-10)。
なお、救急業務実施形態別にみると、単独が436市町村、委託が145市町村、一部事務組合及び広域連合が1,109市町村となっている。

(2)救急隊数、救急隊員数及び准救急隊員数

救急隊は、令和3年4月1日現在、5,302隊(対前年比32隊増)設置されている(第2-5-4図)。
救急隊員は、人命を救うという重要な任務に従事することから、最低135時間の救急業務に関する講習(旧救急I課程)を修了した者等とされている。
令和3年4月1日現在、この資格要件を満たす消防職員は全国で12万9,801人(対前年比2,108人増)となっており、このうち6万5,181人が、救急隊員(専任の救急隊員だけでなく、救急隊員としての辞令が発せられているが、ポンプ自動車等他の消防用自動車と乗換運用している兼任の救急隊員も含む。)として救急業務に従事している(第2-5-5図)。
また、救急隊員の資格要件を満たす消防職員のうち、より高度な応急処置が実施できる250時間の救急科(旧救急標準課程及び旧救急II課程を含む。以下同じ。)を修了した消防職員は、令和3年4月1日現在、全国で8万5,924人(対前年比1,153人増)となっており、このうち3万4,107人が救急隊員として救急業務に従事している。
また、准救急隊員*1については、令和3年4月1日現在、全国で17人が救急業務に従事している。

第2-5-4図 救急隊数の推移

画像をクリック(タップ)すると拡大表示します

第2-5-4図 救急隊数の推移

(備考)「救急年報報告」により作成

第2-5-5図 救急隊員数の推移

画像をクリック(タップ)すると拡大表示します

第2-5-5図 救急隊員数の推移

(備考)「救急年報報告」により作成

(3)救急救命士及び救急救命士運用隊の推移

消防庁では、救急業務の高度化に伴い、全ての救急隊に救急救命士が少なくとも1人配置される体制を目標に、救急救命士の養成と運用体制の整備を推進している。
令和3年4月1日現在、救急救命士を運用している消防本部は、全国724消防本部のうち723本部で、その運用率は、99.9%(前年同数)である。救急救命士を運用している救急隊数は、全国の救急隊5,302隊のうち、99.5%(対前年比0.1ポイント増)に当たる5,275隊(同34隊増)となっており、年々増加している。また、救急救命士の資格を有する消防職員は4万1,266人(同1,223人増)となっているが、このうち2万8,722人(同607人増)が救急救命士として運用されており、年々着実に増加している(第2-5-6図、第2-5-7図)。

第2-5-6図 救急救命士運用隊の推移

画像をクリック(タップ)すると拡大表示します

第2-5-6図 救急救命士運用隊の推移

(備考)「救急年報報告」により作成

第2-5-7図 救急救命士の推移

画像をクリック(タップ)すると拡大表示します

第2-5-7図 救急救命士の推移

(備考)「救急年報報告」により作成

(4)救急自動車数

全国の消防本部における救急自動車の保有台数は、非常用を含め、令和3年4月1日現在、6,579台(対前年比136台増)となっている。このうち高規格救急自動車数は全体の98.1%に当たる6,452台(同173台増)となっている。

(5)高速自動車国道等における救急業務

高速自動車国道、瀬戸中央自動車道及び神戸淡路鳴門自動車道(以下「高速自動車国道等」という。)における救急業務については、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社及び本州四国連絡高速道路株式会社(以下「高速道路株式会社等」という。)が道路管理業務と一元的に自主救急として処理する責任を有するとともに、沿線市町村においても消防法の規定に基づき処理責任を有しており、両者は相協力して適切かつ効率的な人命救護を行うものとされている。
高速自動車国道等における救急業務は、令和3年4月1日現在、供用延長9,197kmの全ての区間について市町村の消防機関により実施されており、高速道路株式会社等においては、救急業務実施市町村に対し、一定の財政負担を行っている。
また、救急車が出動先から帰署する活動については、救急車が不在の状況の回避と次の出動に備えた迅速な待機のために通行する場合、高速道路の無料措置の対象である旨、国土交通省から示されたことを踏まえ、消防庁では、令和3年1月に、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社及び西日本高速道路株式会社との間で、救急出動先からの帰署時の高速道路通行料金の取扱い等を定める協定を締結し、各消防本部に周知した。

*1 准救急隊員:消防法施行令に基づき、過疎地域及び離島において、市町村が適切な救急業務の実施を図るための措置として実施計画を定めたときには、救急隊員2人と准救急隊員1人による救急隊の編成が可能である。准救急隊員は、救急業務に関する基礎的な講習の課程を修了した常勤の消防職員等とされている。

関連リンク

はじめに
はじめに 昨年は、静岡県熱海市土石流災害や8月11日からの大雨などの自然災害に見舞われ、多くの人的・物的被害が生じました。 また、新型コロナウイルス感染症への対応として、救急隊員の感染防止対策の徹底や、ワクチン接種業務への救急救命士の活用など様々な対応が求められました。 気候変動...
1.令和3年7月静岡県熱海市土石流災害による被害及び消防機関等の対応状況
特集1 最近の大規模自然災害等への対応 1.令和3年7月静岡県熱海市土石流災害による被害及び消防機関等の対応状況 (1)災害の概要 6月末から日本付近に停滞した梅雨前線の影響で、西日本から東北地方の広い範囲で大雨となり、各地で河川氾濫、浸水、土砂崩れ等が発生した。 静岡県熱海市では、降り始めから7月...
2.令和3年8月11日からの大雨による被害及び消防機関等の対応状況
2.令和3年8月11日からの大雨による被害及び消防機関等の対応状況 (1)災害の概要 ア 気象の状況 8月11日から21日にかけて、日本付近に停滞した前線に暖かく湿った空気が断続的に流れ込んだ影響で前線の活動が活発となり、西日本から東日本の広い範囲にかけて大雨となった。 特に、8月12日から14日は...
3.栃木県足利市林野火災による被害及び消防機関等の対応状況
3.栃木県足利市林野火災による被害及び消防機関等の対応状況 (1)災害の概要 ア 火災の概要 令和3年2月21日15時20分頃、栃木県足利市西宮町地内にある両崖山山頂付近の山林(通称「紫山」)から出火した。管轄の足利市消防本部は同日の15時36分に覚知し消火活動に当たったが、強風注意報が発表された2...