3.火災原因調査等及び災害・事故への対応
(1)火災原因調査及び危険物流出等の事故原因調査等
ア 火災原因調査及び危険物流出等の事故原因調査等の実施
消防研究センターでは、大規模あるいは特異な火災・危険物流出等の事故を中心に、全国各地においてその原因調査を実施している。また、消防本部への技術支援として、原因究明のための鑑識*6、鑑定*7、現地調査を消防本部の依頼を受け、共同で実施している。
令和2年度から令和3年度(9月30日現在)までに実施した主な火災原因調査は第6-3表のとおりである。また、令和2年度に行った鑑識は73件、鑑定は57件、令和3年度(9月30日現在)に行った鑑識は40件、鑑定は24件である。
第6-3表 火災原因調査及び危険物流出等の事故原因調査の現地調査実施事案一覧(令和2年度から令和3年度(9月30日現在)までの調査実施分)

イ 火災原因調査及び危険物流出等の事故原因調査の高度化に向けた取組
消防研究センターでは、走査型電子顕微鏡、デジタルマイクロスコープ、X線透過装置、ガスクロマトグラフ質量分析計、フーリエ変換型赤外分光光度計、X線回折装置等の調査用の分析機器をはじめとして、研究用の分析機器も含めて、観察する試料や状況に応じて使用する機器を選択し、火災や危険物流出等事故の原因調査を行っている。また、従来の研究や調査から得られた知見を取り入れ、更なる原因調査の高度化に向けた取組も行っている。
さらに、高度な分析機器を積載した機動鑑識車を整備しており、火災や危険物流出等事故の現場において迅速に高度な調査活動を可能とするとともに、消防本部で実施する鑑識・鑑定の支援においても活用している。

(2)災害・事故への対応
消防研究センターでは、火災原因調査及び危険物流出等の事故原因調査に加え、災害・事故における消防活動において専門的知識が必要となった場合には、職員を現地に派遣し、必要に応じて助言を行う等の消防活動に対する技術的支援も行っている。また、消防防災の施策や研究開発の実施・推進にとって重要な災害・事故が発生した際にも、現地に職員を派遣し、被害調査や情報収集等を行っている。
災害・事故における消防活動に対する主な技術的支援としては、令和3年7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害において、職員を派遣し、救助活動の安全確保などの技術的支援を行った。また、令和3年5月に福島県いわき市で発生した化学工場の爆発火災では、現地派遣は行わなかったが危険物と消火を専門とする研究官が、亜鉛末の火災の消火方法等に関する技術的支援を実施した。
研究開発に係る災害・事故の調査としては、令和2年4月に宮城県岩沼市で発生した大型物流倉庫火災や令和2年5月に大分県大分市で発生した製油所の蒸留塔火災の現場調査を実施し、消防活動に係る研究に活用可能な情報を収集した。
さらには、令和3年2月の福島県沖を震源とする地震により宮城県仙台市の製油所で発生した石油タンクからの危険物流出事故の現場調査を実施し、危険物施設の地震時の挙動に関する研究開発に必要な情報を収集した。
*6 鑑識:火災の原因判定のため具体的な事実関係を明らかにすること
*7 鑑定:科学的手法により、必要な試験及び実験を行い、火災の原因判定のための資料を得ること