令和5年版 消防白書

特集4 消防団を中核とした地域防災力の充実強化

火災の発生に加え、全国各地で地震や風水害等の大規模災害が激甚化・頻発化する中、地域住民の生命、身体及び財産を災害から保護する地域防災力の重要性が更に増している。
消防庁では、平成25年12月に成立した消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律(以下、本特集において「消防団等充実強化法」という。)(特集4-1図)を踏まえ、地域で防災活動を担う多様な主体が支える地域防災力の充実強化に向け取り組んでいる。

 

特集4-1図 消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律概要

画像をクリック(タップ)すると拡大表示します

消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律概要

特に消防団は、
・地域密着性(消防団員は管轄区域内に居住又は勤務)
・要員動員力(消防団員数は消防職員数の約4.5倍)
・即時対応力(日頃からの教育訓練により災害対応の技術・知識を習得)
といった特性を有しており、地域防災力の中核として、更なる充実強化に向け取り組む必要がある。

1. 消防団の現状

 

(1)消防団員の減少

消防団員数は年々減少しており、令和5年4月1日現在、前年に比べ2万908人減少し、76万2,670人となっており、令和4年以降、2年連続で前年比2万人以上減少している(特集4-2図)。

 

特集4-2図 消防団員数及び被用者である消防団員の割合の推移

画像をクリック(タップ)すると拡大表示します

(各年4月1日現在)

消防団員数及び被用者である消防団員の割合の推移

(備考)「消防防災・震災対策現況調査」及び「消防団の組織概要等に関する調査」により作成

 

(2)若年層の入団者数減少

近年の消防団員の入団者数・退団者数をみると、退団者数が高い水準で推移している中、入団者数についても、令和5年調査においては、やや持ち直して8年ぶりの増加となったものの、減少傾向にある(特集4-3図)。

 

特集4-3図 入団者数・退団者数の推移

画像をクリック(タップ)すると拡大表示します

(各年4月1日現在)

入団者数・退団者数の推移

(備考)「消防団の組織概要等に関する調査」により作成

 

年齢階層別に入団者数をみると、特に若年層の入団者数が減少傾向にある(特集4-4図)。

 

特集4-4図 年齢階層別入団者数の推移

画像をクリック(タップ)すると拡大表示します

(各年4月1日現在)

年齢階層別入団者数の推移

(備考)「消防防災・震災対策現況調査」及び「消防団の組織概要等に関する調査」により作成

 

それに伴い、消防団員の平均年齢は毎年少しずつ上昇しており、令和5年4月1日現在、前年に比べ0.4歳上昇し、平均43.6歳となっている(特集4-5図)。

 

特集4-5図 消防団員の年齢構成比率の推移

画像をクリック(タップ)すると拡大表示します

(各年4月1日現在)

消防団員の年齢構成比率の推移

(備考)
1 「消防防災・震災対策現況調査」及び「消防団の組織概要等に関する調査」により作成
2 昭和40年、昭和50年は「60歳以上」の統計が存在しない。また、昭和40年は平均年齢の統計が存在しない。

 

(3)被用者である消防団員の割合の増加

被用者である消防団員の全消防団員に占める割合は高い水準で推移しており、令和5年4月1日現在、前年に比べ若干下降したものの、72.8%となっている(特集4-2図)。

 

(4)女性消防団員の増加

消防団員数が減少する中、女性消防団員の数は年々増加しており、令和5年4月1日現在、前年に比べ351人増加し、2万7,954人となっている(特集4-6図)。また、女性消防団員がいる消防団の割合は、同日現在で、78.3%となっている。

 

特集4-6図 女性消防団員数の推移

画像をクリック(タップ)すると拡大表示します

(各年4月1日現在)

女性消防団員数の推移

(備考)「消防防災・震災対策現況調査」及び「消防団の組織概要等に関する調査」により作成

 

(5)学生消防団員の増加

大学生、大学院生、専門学校生等の消防団員(以下、本特集において「学生消防団員」という。)の数は令和5年4月1日現在、前年に比べ856人増加し、6,562人となっている(特集4-7図)。消防団員数が減少する中、学生消防団員の数は増加傾向にある。

特集4-7図 学生消防団員数の推移

画像をクリック(タップ)すると拡大表示します

(各年4月1日現在) 

学生消防団員数の推移

(備考)「消防防災・震災対策現況調査」及び「消防団の組織概要等に関する調査」により作成

 

(6)機能別消防団員の増加

機能別消防団員とは、全ての災害対応・活動に参加する基本団員とは異なり、入団時に決めた特定の活動・役割を担う消防団員である。例えば、基本団員のみでは人員不足が生じるような大規模災害に限り出動する「大規模災害団員」や、高齢者宅訪問等の火災予防、広報活動等のみに従事する団員などが挙げられる。
基本団員の数が減少する中、機能別消防団員の数は年々増加しており、令和5年4月1日現在の機能別消防団員の数は、前年に比べ2,572人増加し、3万4,690人となっている(特集4-8図)。

 

特集4-8図 機能別消防団員数の推移

画像をクリック(タップ)すると拡大表示します

(各年4月1日現在)

機能別消防団員数の推移

(備考)「消防団の組織概要等に関する調査」により作成

関連リンク

はじめに
はじめに 昨年は、静岡県熱海市土石流災害や8月11日からの大雨などの自然災害に見舞われ、多くの人的・物的被害が生じました。 また、新型コロナウイルス感染症への対応として、救急隊員の感染防止対策の徹底や、ワクチン接種業務への救急救命士の活用など様々な対応が求められました。 気候変動の影響により、近年、...
1.能登半島沖を震源とする地震に係る被害及び消防機関等の対応状況
特集1 近年の大規模自然災害を踏まえた消防防災体制の整備 1. 能登半島沖を震源とする地震に係る被害及び消防機関等の対応状況 (1)災害の概要 ア 地震の概要  令和5年5月5日14時42分、能登半島沖を震源とするマグニチュード6.5の地震が発生し、石川県珠洲市で震度6強を観測した。 また、同日21...
2.令和5年梅雨前線による大雨及び台風第2号に係る被害及び消防機関等の対応状況
2. 令和5年梅雨前線による大雨及び台風第2号に係る被害及び消防機関等の対応状況 (1)災害の概要 ア 気象の状況 令和5年6月1日から3日午前中にかけて、梅雨前線が本州付近に停滞した。前線に向かって台風第2号周辺の非常に暖かく湿った空気が流れ込んだため、2日には前線の活動が活発になった。西日本から...
3.令和5年6月29日からの大雨等に係る被害及び消防機関等の対応状況
3. 令和5年6月29日からの大雨等に係る被害及び消防機関等の対応状況 (1)災害の概要 ア 気象の状況 令和5年6月28日から7月6日にかけて、活発な梅雨前線や上空の寒気の影響で、沖縄地方を除いて全国的に大雨となった。7月1日から3日にかけては山口県、熊本県及び鹿児島県(奄美地方)で線状降水帯が発...