令和6年版 消防白書

6.消防用設備等

(1)消防同意の現況

消防同意は、消防機関が防火の専門家としての立場から、建築物の火災予防について設計の段階から関与し、建築物の安全性を高めることを目的として設けられている制度である。
令和5年度の全国における消防同意事務に係る処理件数は、18万6,218件で、そのうち不同意としたものは9件であった(資料1-1-65)。

(2)消防用設備等の設置の現況

消防法では、防火対象物の関係者は、当該防火対象物の用途、規模、構造及び収容人員に応じ、所要の消防用設備等を設置し、かつ、それを適正に維持しなければならないとされている。
全国における主な消防用設備等の設置状況を特定防火対象物についてみると、令和6年3月31日現在、スプリンクラー設備の設置率(設置数/設置必要数)は99.9%、自動火災報知設備の設置率は99.7%となっている(資料1-1-66
消防用設備等に係る技術上の基準については、技術の進歩や社会的要請に応じ、逐次、規定の整備を行っている。
また、消防用設備等の設置義務違反等の消防法令違反対象物については、消防法に基づく措置命令等を積極的に発し、迅速かつ効果的な違反処理を更に進めることとしている。

(3)消防設備士及び消防設備点検資格者

消防用設備等は、消防の用に供する機械器具に係る検定制度等により性能の確保が図られているが、工事又は整備の段階において不備・欠陥があると、火災が発生した際に本来の機能を発揮することができなくなる。このような事態を防止するため、一定の消防用設備等の工事又は整備は、消防設備士に限って行うことができることとされている。
また、消防用設備等は、いかなるときでも機能を発揮できるように日常の維持管理が十分になされることが必要であることから、定期的な点検の実施と点検結果の報告が義務付けられている。維持管理の前提となる点検には、消防用設備等についての知識や技術が必要であることから、一定の防火対象物の関係者は、消防用設備等の点検を消防設備士又は消防設備点検資格者(消防庁長官の登録を受けた法人が実施する一定の講習の課程を修了し、消防設備点検資格者免状の交付を受けた者)に行わせなければならないこととされている。
消防設備士及び消防設備点検資格者には、消防用設備等に関する新しい知識や技能の習得のため、免状取得後の一定期間ごとに再講習を受けることを義務付けている。また、これらの者が消防法令に違反した場合においては、免状の返納命令等を実施している。
令和6年3月31日現在、消防設備士の数は延べ134万8,089人(資料1-1-67)、消防設備点検資格者の数は特種(特殊消防用設備等)800人、第1種(機械系統)17万3,100人、第2種(電気系統)16万2,690人となっている。

(4)防炎規制

ア 防炎物品の使用状況

高層建築物や地下街のような構造上、形態上特に防火に留意する必要のある防火対象物や、劇場、旅館、病院等の不特定多数の人や要配慮者が利用する防火対象物(以下、本節において「防炎防火対象物」という。)においては、着火物となりやすい各種の物品に燃えにくいものを使用することで、出火を防止すると同時に火災初期における延焼拡大を抑制することが火災予防上非常に有効である。このことから、防炎防火対象物においてはカーテン、どん帳、展示用合板、じゅうたん等の物品(以下、本節において「防炎対象物品」という。)には、消防法により、所定の防炎性能を有するもの(以下、本節において「防炎物品」という。)を使用することを義務付けている。
令和6年3月31日現在、全国の防炎防火対象物数は、100万2,147件であり、適合率(防炎防火対象物において使用される防炎対象物品が全て防炎物品である防炎防火対象物の割合)は、カーテン・どん帳等を使用する防炎防火対象物で88.2%、じゅうたんを使用する防炎防火対象物で88.7%、展示用合板を使用する防炎防火対象物で84.7%となっている。(資料1-1-68

イ 寝具類等の防炎品の普及啓発

防炎対象物品以外の布団やパジャマ、自動車やオートバイのボディカバー等についても、防炎品を使用することは火災予防上非常に有効であることから、消防庁ではホームページ(参照URL:https://www.fdma.go.jp/relocation/html/life/yobou_contents/fire_retardant/)において、これらの防炎品の効果に係る動画を掲載するなど、その普及啓発を行っている。

(5)火を使用する設備・器具等に関する規制

火災予防の観点から、こんろ、ストーブ、給湯器、炉、厨房設備、サウナ設備などの火を使用する設備・器具等の位置、構造、管理及び取扱いについては、対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令に基づき、各市町村が定める火災予防条例によって規制されている。

関連リンク

はじめに
はじめに 昨年は、元日に令和6年能登半島地震が発生し、多くの尊い命が失われ、甚大な被害をもたらしました。5月以降は、大雨や台風などによる被害が日本各地で生じたことに加え、8月には宮崎県日向灘を震源とする地震が発生し、南海トラフ地震臨時情報が初めて発表されました。また、9月20日からの大雨では、石川県...
1.令和6年能登半島地震への対応
特集1 令和6年能登半島地震等への対応 1.令和6年能登半島地震への対応 (1)地震の概要 令和6年1月1日16時10分、石川県能登地方を震源とするマグニチュード7.6の地震(以下、本特集において「本地震」という。)が発生し、石川県輪島市や志賀町で震度7を観測したほか、北陸地方を中心に北海道から九州...
2.地震の検証と今後の対応
2.地震の検証と今後の対応 (1)政府における検証 政府においては、関係省庁が連携して初動対応に当たるとともに、救命救助や捜索、インフラやライフラインの復旧、被災者支援等に政府一体となって取り組んだ。これらの経験を今後の災害対応に活かしていくため、政府は内閣官房副長官補(内政担当)を座長とする「令和...
3.令和6年9月20日からの大雨への対応
3.令和6年9月20日からの大雨への対応 (1)災害の概要 ア 気象の状況 令和6年9月20日頃から前線が日本海から東北地方付近に停滞し、21日は前線上の低気圧が日本海を東に進み、22日には台風第14号から変わった低気圧が日本海から三陸沖へ進んだ。低気圧や前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだ影...