令和6年版 消防白書

4.令和6年7月25日からの大雨に係る被害及び消防機関等の対応状況

(1)災害の概要

ア 気象の状況

令和6年7月23日頃から北日本に停滞した梅雨前線の影響で、東北地方の日本海側を中心に北日本から西日本にかけて大雨となり、特に山形県では25日の昼過ぎと夜に線状降水帯が発生した。気象庁は同日13時05分に山形県を対象に大雨特別警報を発表し、20時10分に大雨警報に切り替えたのち、23時40分に再び山形県を対象に大雨特別警報を発表した。
また、東北地方を中心に、24日から26日にかけての3日間の降水量が400ミリを超えた地点や平年の7月の月降水量を超えた地点があり、記録的な大雨となった。

イ 被害の状況

この記録的な大雨により、東北地方の日本海側を中心に広い範囲で河川氾濫、浸水、がけ崩れ等の被害が発生した。特に、山形県新庄市において、大雨の影響で警察官2人が浸水に巻き込まれるなど、山形県で死者3人・負傷者4人、秋田県で死者2人・負傷者1人の人的被害が発生した。
また、住家被害については、山形県で1,763棟、秋田県で317棟など、計2,098棟となっている(令和6年11月21日現在)。

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被害の状況1
(由利本荘市消防本部提供)

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被害の状況2
(酒田地区広域行政組合消防本部提供)

(2)政府の主な動き及び消防機関等の活動

ア 政府の主な動き

政府においては、7月25日13時05分に官邸連絡室を設置した。同日13時45分には、関係省庁災害警戒会議を開催し、地方公共団体や国民に対し大雨への警戒を呼び掛けた。
翌日、7月26日0時58分に官邸対策室へ改組した。同日1時27分には、関係省庁の局長級等で構成される緊急参集チームによる協議が開始され、関係省庁間で被害状況等の情報が共有された(特集2-1表)。

特集2-1表 政府の主な動き

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イ 消防庁の対応

消防庁においては、7月25日13時05分に国民保護・防災部長を長とする消防庁災害対策本部(第2次応急体制)を設置し、情報収集体制の強化を図るとともに、大雨特別警報が発表された山形県等に対し適切な対応及び被害報告について要請した。
また、同日15時25分に都道府県及び指定都市に対し「令和6年7月25日からの大雨についての警戒情報」を発出し、災害対応に万全を期すよう呼び掛けた。
さらに、7月26日0時58分に消防庁長官を長とする消防庁災害対策本部(第3次応急体制)に改組し、応急体制の強化を行うとともに、大雨特別警報が発表された山形県に対し、迅速な初動対応及び被害報告を要請した(特集2-2表)。

特集2-2表 消防庁の対応

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ウ 被災自治体の対応

この大雨により、秋田県及び山形県が災害対策本部を設置した。
また、被災市町村では、住民に対し、大雨による家屋の浸水や土砂災害への警戒を促すとともに、順次避難指示等を発令し、早期の避難を呼び掛けた。

エ 消防機関の対応

(ア)消防本部
被害を受けた地域を管轄する消防本部では、多数の119番通報が入電し、直ちに救助・救急等の活動に当たった。
大規模な浸水被害が発生した山形県新庄市では、地元消防本部が消防団及び県内消防本部からの応援隊と協力し、捜索・救助活動等に当たった。
また、山形県内応援隊11隊が山形県広域消防相互応援協定に基づき、最上広域市町村圏事務組合消防本部に向け出動した。山形県内応援隊11隊を含む、各消防機関等の救助活動により、山形県防災ヘリコプターでの8人の救出をはじめ、少なくとも153人を救出した。

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救出活動の様子
(由利本荘市消防本部提供)

(イ)消防団
秋田県及び山形県の市町村をはじめ、甚大な被害に見舞われた多くの市町村において、消防団は、危険箇所の巡視・警戒、早期避難の呼び掛け、住民の避難誘導、ポンプによる排水活動及びボートによる救助活動等を行ったほか、土砂流入を防ぐ土のう設置作業等を実施した。

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消防団の活動の様子
(山形県鶴岡市提供)

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