令和6年版 消防白書

3.令和6年7月10日からの大雨に係る被害及び消防機関等の対応状況

(1)災害の概要

ア 気象の状況

令6年7月10日から15日にかけて、梅雨前線が日本付近に停滞し、前線や低気圧に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で前線の活動が活発となった。
九州を中心に西日本から東北地方にかけて大雨となり、長崎県では、14日朝に線状降水帯が発生した。10日から15日にかけての総降水量は、九州南部で500ミリを超える所があった。

イ 被害の状況

この記録的な大雨により、西日本から東日本の広い範囲で浸水、がけ崩れ等の被害が発生した。特に、愛媛県松山市において、がけ崩れに住家が巻き込まれるなど、愛媛県で死者3人、島根県及び広島県で負傷者2人の人的被害が発生した。
また、住家被害については、山口県で131棟、島根県で105棟など、計275棟となっている(令和6年11月21日現在)。

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被害の状況
(松山市消防局提供)

(2)政府の主な動き及び消防機関等の活動

ア 政府の主な動き

政府においては、7月10日15時30分に情報連絡室を設置するとともに、関係省庁災害警戒会議を開催し、地方公共団体や国民に対し大雨への警戒を呼び掛けた。

イ 消防庁の対応

消防庁においては、7月10日15時30分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室(第1次応急体制)を設置し、情報収集体制の強化を図るとともに、都道府県及び指定都市に対し「令和6年7月10日からの梅雨前線による大雨についての警戒情報」を同日発出し、災害対応に万全を期すよう呼び掛けた。

ウ 被災自治体の対応

この大雨により、島根県が災害対策本部を設置した。
また、被災市町村では、住民に対し、大雨による家屋の浸水や土砂災害への警戒を促すとともに、順次避難指示等を発令し、早期の避難を呼び掛けた。

エ 消防機関の対応

(ア)消防本部
大規模ながけ崩れが発生した愛媛県松山市では、松山市消防局が消防団と協力し、安否不明者の捜索・救助活動に当たった。

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消防機関の活動
(松山市消防局提供)

(イ)消防団
松山市消防団は、チェーンソーを活用した障害物の撤去作業を行い、常備消防と連携した要救助者の捜索に当たったほか、機動重機隊及び人力による土砂撤去や土砂流入を防ぐ土のう設置作業等を実施した。

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消防団による土砂撤去作業の様子
(松山市提供)

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消防団による土のう設置作業の様子
(松山市提供)

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