特集3 緊急消防援助隊の充実強化
1.緊急消防援助隊
平成7年1月17日午前5時46分に発生した兵庫県南部地震(以下、本特集において「本地震」という。)によりもたらされた阪神・淡路大震災では、死者・行方不明者6,437人、負傷者4万3,792人、住宅被害63万9,686棟という甚大な被害が生じ、兵庫県内の消防応援と併せて全国41都道府県から、延べ約3万人の消防応援が行われた。
本地震では、地元の地方公共団体による被害状況の把握や応援要請などの基本的な対応が困難となり、初動対応に支障が生じた。また、全国からの消防広域応援を行うに当たり、応援部隊の迅速な出動体制や指揮命令系統の整備、応援のための車両・資機材の確保など、様々な課題が浮き彫りとなった。
これらの課題に対応し、国内で発生した地震等の大規模災害における人命救助等をより効果的かつ迅速に実施できるよう、全国の消防機関相互による援助体制として、同年6月、緊急消防援助隊が創設された。緊急消防援助隊発足から30年近くが経過し、令和6年11月現在で45回出動している。
緊急消防援助隊は、平成15年の消防組織法改正により法制化された。大規模災害等が発生した際には、消防組織法第44条に基づき、被災都道府県知事からの応援要請を受け又は応援要請を待たずに、消防庁長官の求め又は指示により、全国から消防部隊が被災地へ集中的に出動する仕組みとして確立している。大規模災害時に的確に全国的な応援体制がとれるよう、創設当初1,267隊であった登録隊数を6,661隊(令和6年4月1日現在)まで増加させてきたほか、実災害における課題や経験を踏まえ、車両や資機材の増強を図ることにより、人命救助活動等を実施する緊急消防援助隊の体制を充実強化してきた。
南海トラフ地震、首都直下地震及び日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震など国家的な非常災害の発生が切迫する中、緊急消防援助隊の充実強化を更に進めていくことが、ますます重要となっている。
特集3-1表 緊急消防援助隊の出動実績
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