令和6年版 消防白書

Topics1 消防の広域化及び連携・協力

トピックス1-1図 おおいた消防指令センター

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・総事業費約65億円(プロポーザル方式)
・指令台9台(災害輻輳時には機能分割により最大36件の通報に対応可能)
・1当務勤務員14名、2交代制(全勤務員49名、うち日勤者7名)
※大分県:面積約6,341平方キロメートル、人口約110万人。県土の約7割が山地であり豊後水道に沿ってリアス海岸が続く複雑な地形を有している。

■全国初の全県一区の共同消防指令センター

令和6年10月1日、大分県内全18市町村14消防本部による「おおいた消防指令センター」の本格運用が開始された。
平成31年3月に大分県と各市町村共同による指令業務の共同運用に係る勉強会が開始され、その後、双方による共同運用の実施に向けた具体的な検討が行われた。令和3年には各市町村において大分市への消防指令業務に係る「事務の委託」が議決され、この度、指令システムの整備等が完了し、本格運用開始に至った。
全国で初めてとなる全県一区での指令センターの共同運用により、一元的な災害情報の把握が可能となり、相互応援について迅速な判断が可能となるほか、通報者との映像の送受信が可能な映像通報システムが新たに導入されたことで、通報時の詳細な災害状況等の把握が県内全域で可能となるなど、住民サービスの向上につながる効果が期待される。

■広域化及び連携・協力の推進状況

消防の広域化は、2以上の市町村が消防事務(消防団の事務を除く。以下同じ。)を共同で行うことをいい、平成18年に消防組織法に位置付けられて以降、消防本部の規模拡大による体制の強化を目的として、消防庁が「市町村の消防の広域化に関する基本指針」(以下、本トピックスにおいて「広域化基本指針」という。)を示し、推進してきた。平成18年には811あった消防本部数は、広域化に伴う消防組織の統合により、令和6年4月1日現在では、720となった。

トピックス1-1表 近年の広域化の実績

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また、消防の連携・協力は、一部の消防事務を共同で行うことをいい、平成31年4月1日以降に広域化した7地域のうち5地域では、消防の連携・協力に取り組んでいたことから、連携・協力を進めていくことで、広域化を実現するための下地が作られることが期待される。
消防庁では、連携・協力について、「市町村の消防の連携・協力に関する基本指針」(以下「連携・協力基本指針」という。)を示して推進しており、連携・協力の中でも特に、高機能消防指令センターの共同運用は、現場要員の充実や高度な運用により区域内の消防力を大きく向上させることが可能となるほか、財政面でのメリットも大きいといえる。令和6年4月1日現在では、50地域212本部で指令の共同運用が実施されている。

■基本指針の改正

大規模な地震、風水害といった激甚化する自然災害や新たな感染症の拡大への備え、DXの進展に伴う人材確保の必要性などを踏まえると、消防本部規模の拡大等によるスケールメリットを活かし、消防を取り巻く環境の変化に的確に対応していくことが必要である。
これらのことから、引き続き、広域化等の取組を推進するため、消防庁では、令和6年4月1日に推進期限を迎えた広域化基本指針及び連携・協力基本指針を改正した。新しい基本指針においては、どちらも推進期限を令和11年4月1日まで延長した。
広域化基本指針の主な改正ポイントは、次のとおりである。
① 中心となる消防本部の積極的な取組が広域化の実現に寄与していたため、地域の核として広域化の検討を主導する「中心消防本部」を、都道府県が定める消防広域化推進計画に新たに位置付けられるようにした。
② 広域化につながった連携・協力の事例を基に、連携・協力の類型を七つに見直した。
③ 広域化や連携・協力に関する地方財政措置を拡充した。

トピックス1-2図 広域化基本指針の改正のポイント

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