令和6年版 消防白書

Topics4 地方公共団体の受援計画の策定促進

トピックス4-1図 災害時応援受援体制のイメージ

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大規模災害時には、人命救助だけではなく、避難所運営、支援物資の供給、罹災証明などの膨大な業務が発生することから、被災地方公共団体のみで災害対応を全て実施することは極めて困難である。
そこで、地方公共団体においては、国、他の地方公共団体、関係機関等との相互連携のもと、人的・物的支援の受入れ体制(受援体制)を構築することで、災害対応力を強化することが求められている。

■地方公共団体の受援計画の策定状況

地方公共団体は、災害の規模や被災地のニーズに応じて円滑に他の地方公共団体等から受援できるよう、あらかじめ受援計画を策定することが重要である。消防庁及び内閣府では、地方公共団体に対して、毎年、受援計画の策定状況について調査を実施しており、令和5年6月1日現在で、都道府県は全ての団体で策定済みである一方、市町村は策定済みの団体が約75%であり、未策定の団体が約25%の状況にある。 

トピックス4-2図 地方公共団体の受援計画の策定割合(令和5年6月1日時点)

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■受援計画の策定促進

消防庁においては、令和6年能登半島地震における対応等も踏まえ、地方公共団体における受援体制の構築に向けて、内閣府と連携した研修会の実施などにより、引き続き、受援計画を策定していない市町村に対する策定の要請を行っていく。
また、受援計画を策定した地方公共団体に対しても、庁内全体の受援担当者や受援対象業務ごとの担当者の選定や、応援職員の執務スペース確保の手順・内容、宿泊場所として活用可能な施設のリスト化、民間事業者との協力体制などを当該計画に位置付け、より実効性を高めることにより、災害対応力の強化を図るよう、内閣府と連携し、研修会等を通じて、周知を図っていく。

トピックス4-1表 地方公共団体の受援計画における主な項目の記載割合(令和5年6月1日時点)

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※各項目の割合は、全ての都道府県又は市町村に対するもの

■消防本部の受援能力の向上について

大規模災害時、被災地消防本部は、消火、救助、救急活動に追われる中、緊急消防援助隊を始めとした応援隊を円滑に受け入れる役割を担い、連携して活動を行う必要がある。
しかし、多くの消防本部では、大規模災害に被災した経験が少ないため、応援要請の遅れや応援隊の受入れ等、受援に課題が生じる場合がある。このことから、消防本部の受援能力向上のため、消防機関等の受入れに係る受援計画の策定や見直し、訓練の実施等、平時からの準備が重要である。
消防庁では、令和元年度に消防本部に対し、上記受援計画の策定例を提示し、要請の基準、要請判断の方法、受援業務の分担など、受援計画に定めるべき内容を明確化したほか、実災害を踏まえて、随時、内容を見直し、補強してきた。また、受援能力の向上には日々の受援訓練が重要であるため、令和5年度には、訓練の企画から実施までのポイントをまとめた動画を作成し、全国の消防本部等に共有した。
さらに、緊急消防援助隊地域ブロック合同訓練では、地域特性を反映した災害想定のもと、消防本部に災害対策本部等を設置し、受援体制の構築、応援要請等に係る情報伝達、受援調整及び部隊活動調整等について、ロールプレイング方式による図上訓練を実施している。
引き続き、受援計画の策定や見直しの推進、実践的な訓練の実施を通じて、全国の消防本部等の受援能力の向上に取り組んでいく。

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緊急消防援助隊の受援訓練の様子

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受援図上訓練教養動画

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地域ブロック合同訓練での受援訓練の様子

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