火災対策(監修:消防研究センター)
4.接触不良による電気火災

 接触不良による電気火災について説明しましょう。
 この火災事例はブレーカーの配線接続部で、発熱し出火したものです。
 これは、接続部の端子と配線がしっかりと接続されていない場合や接続部分でのゆるみなどによって、接触部の電気抵抗が増大し、ジュール熱により発熱するものです。
 ジュール熱とは、導体に電流を流すと導体の抵抗のため熱が発生します。発熱量は、電流値の2乗に比例します。一般的には、電熱器のニクロム線もジュール熱によるものです。
 中央の接続端子部で発熱し、端子カバーが焼失し、周囲の樹脂に焼損がみられます。中央の接続端子の接続ネジに、緩みが生じているのがわかると思います。

 導体の接続部の接触状態が不良になると、電流が流れた際に発熱し、出火することがあります。その原因のひとつは接触抵抗の増大に伴う、ジュール熱の発生です。金属同士の接触抵抗値は通常ごくわずかですが、接触端子のビスのゆるみや接触面の腐食などにより、接触抵抗が増加します。正常な接続状態の場合と、接触不良の場合の温度変化を熱画像装置でみてみましょう。10アンペアの電流を流してみます。右側の接触不良がある端子部分の温度がしだいに上昇していくのがわかります。このまま放置すると、出火する可能性があります。

 この火災事例は壁付けコンセントの背面から出火したものです。
 これはコンセントの内部の受け刃と接続ケーブルを撮影したものです。
 下側の接続部分は、上側の接続状態と比較すると、完全に接続されていないため、接触部の電気抵抗が増大し、ジュール熱により発熱、出火したものです。
 この火災事例は、クーラーの電源コードが、コンセントまで届かなかったために、クーラーのコードと他の種類の違ったコードを手でよってつなぎ合わせ、ビニルテープを巻いてクーラーを使用していたところ、接続が不完全であっため、クーラーを使用中にこの部分で電気抵抗が増大し、ジュール熱により発熱、出火したものです。
 矢印の部分が出火箇所で、コードをより合わせた部分です。この接続部で電気抵抗が増大し、ジュール熱などにより発熱、配線被覆などに着火しました。
 また、クーラーの電源コードをステップルで固定している状況が見られますが、家電製品の電源コードや延長コードをステップルで固定する行為はいかなる場合でも、法律により禁止されています。
 焼損した配線被覆及びビニルテープが見られます。接続部分はジュール熱により、芯線が溶融しているのがわかると思います。また、ステップルを強く打ち付けることにより、配線にストレスが生じて発熱することもあります。

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