NBC災害対応用資機材 (監修·制作協力:東京消防庁第三消防方面本部消防救助機動部隊)
3.化学剤・生物剤からの防護

 化学剤、生物剤が存在する災害現場での活動では、活動するゾーンごとに生物剤、化学剤などの有害物質から全身や呼吸を保護する必要があるため、その状況に合わせ、適切な活動スタイルを選択し活動します。
 例えば、空気呼吸器などの自給式呼吸保護具を使用した防護スタイルでは、空気ボンベの交換が必要となり、活動する隊員がホットゾーンとコールドゾーンとの間で往復する必要があります。
 このため、特に建物内で生物剤が存在する場合は、往復することにより生物剤の拡散につながる可能性があります。そこで、N95規格と同等以上(できればP100規格以上)の捕集率を備えた防じんマスク(できれば全面式)と化学防護服(陽圧式除く)又は簡易防護服を着用した防護スタイルにより、長時間建物内で活動でき拡散防止になります。



・陽圧式化学防護服
 放射性物質からの防護の場合と同様に、高い機密性と空気呼吸器などの使用により、隊員を外界の環境から隔離し、生物剤、化学剤などの有毒物質の侵入を防ぎます。


・化学防護服(陽圧式を除く)
 液体状の有害な物質が浸透しない素材でできており、空気呼吸器または酸素呼吸器を併用することで、生物剤、化学剤などの有害物質から全身を保護します。
 なお、防護服の継ぎ目となる部分がある場合はテープなどで十分に密閉する必要があります。


・簡易化学防護服
 有害な粒子の侵入を防ぐ素材でできています。状況に応じて、全面式マスク及び肌の露出部分をガムテープなどで目張りして隙間をなくし、化学剤などの進入を防ぎます。なお、簡易防護服がない場合は、状況により、応急的に雨合羽により代用されることもあります。


・防毒マスク
 有毒な化学薬品などの物質は、多くの種類が存在します。これらの有毒ガスを防ぐため、化学防護服及び簡易化学防護服などと併用し、肌の露出を防ぐとともに、物理的又は化学的にガスの有毒成分を吸着させることが必要となります。そのため、ガスの種類に応じた適切な吸収缶を使用します。
 生物剤や化学剤が存在する可能性のある災害現場での救急活動や、これらに汚染された傷病者に対する救急活動時に、救急隊員の呼吸器官及び顔面を保護するために使用します。


・防塵マスク
 空気中の粒子の捕集率により、「N95規格」や「P100規格」(米国国立労働安全衛生研究所:NIOSHによる認定)などの種類があり、これらのマスクを確実に装着することにより、粉末などの生物剤に対する呼吸器系の保護を行います。


 (N95規格:米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)認定の規格で、0.075マイクロメートル以上の固体粒子(塩化ナトリウム)を95%以上カットできます。)
 (P100規格:米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)認定の規格で、0.055マイクロメートル以上の固体粒子(塩化ナトリウム)及び液体粒子(フタル酸ジオクチル)を99.97%以上カットできます。)

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