平成21年版 消防白書

6 消防用設備等に係る技術基準の性能規定化

平成16年まで、消防用設備等に係る技術上の基準は、材料・寸法などを仕様書的に規定しているものが多かったため、十分な性能を有する場合であっても、新たな技術を受け入れにくいという面があった。そこで消防庁では、消防防災分野における技術開発を促進するとともに、一層効果的な防火安全対策を構築するために、平成15年6月に消防法を、平成16年2月に消防法施行令を改正し、消防用設備等に係る技術上の基準に性能規定を導入している。
消防用設備等の技術基準に性能規定を導入するに当たっての基本的な考え方は、従来の技術基準に基づき設置されている消防用設備等と同等以上の性能を有するかどうかについて判断し、同等以上の性能を有していると確認できた設備については、それらの消防用設備等に代えて、その設置を認めることとしたものである。
消防用設備等に求められる性能は、火災の拡大を初期に抑制する性能である「初期拡大抑制性能」、火災時に安全に避難することを支援する性能である「避難安全支援性能」、消防隊による活動を支援する性能である「消防活動支援性能」に分けられる。これらについて、一定の知見が得られているものについては、客観的検証法(新たな技術開発や技術的工夫について客観的かつ公正に検証する方法)等により、同等性の評価が行われることとなる。
一方、既定の客観的検証法のみでは同等性の評価ができない設備等(特殊消防用設備等)を対象として、総務大臣による認定制度が設けられている。これは、一般的な審査基準が確立されていない「特殊消防用設備等」について、防火対象物ごとに申請を行い、性能評価機関(日本消防検定協会又は登録検定機関)の評価結果に基づき総務大臣が審査を行って、必要な性能を有するものを設置できることとするものである(平成21年8月1日現在、認定済み特殊消防用設備等35件)。
特殊消防用設備等としての設置実績等を通じ、一定の知見が蓄積されたものについては、順次基準化を行うこととしている。平成21年9月には、特殊消防用設備等として設置されていた「加圧防排煙設備」について、新たに省令・告示を制定し、技術基準を整備したところである。
これらの取組を通じ、新技術等を用いた新たな設備等が、積極的に開発・普及されることが期待される。

無線式自動火災報知設備について

自動火災報知設備は、早期に火災の発生を感知し、その旨をすみやかに防火対象物の関係者に報知することを目的とするものです。従来の自動火災報知設備は、感知器又は発信機から発せられた火災信号を配線を介して受信機へ伝達し、同じく配線で接続された地区音響装置を鳴動させることにより、火災が発生した旨を防火対象物の関係者に報知するものでした(図1)。また、受信機をシステムの中枢として、配線を通じた電源及び非常電源等の管理までを一括して行っているものであるため、従来の技術基準もこれを前提とした内容となっていました。

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一方、近年の情報通信技術の進展により、無線ネットワーク等が幅広い分野で実用に供されるようになっており、自動火災報知設備についても、多様な設置対象に柔軟に対応できる無線方式を導入するニーズが高まってきたことから、消防庁では、平成17年度から平成19年度まで「ユビキタス機能を応用した高機能自動火災報知設備の開発に関する検討会」を開催し、平成20年2月に報告書がとりまとめられました。
これらの検討結果を踏まえ、平成20年12月「消防法施行規則の一部を改正する省令」(平成20年総務省令第155号)等により、無線式の自動火災報知設備に関する技術上の基準が定められ、感知器、中継器、地区音響装置、発信機及び受信機間のすべて又は一部を無線で結ぶ方法によることが可能となりました(図2)。
また、最近の重大火災等を踏まえ、新たに自動火災報知設備が義務づけられることとなった小規模グループホーム等や個室ビデオ店等については、受信機を介さず、警報機能付きの感知器が相互に無線で連動するタイプのシステムも選択できるように基準を整備しています。
無線方式の自動火災報知設備は、有線方式のものと比べ、レイアウトや間仕切りなど設置環境の変化に柔軟に対応でき、既存建屋における設置工事も容易になります。また、感知器等の未設置による消防法令違反の是正を推進することにも一役を担うものであると考えられます。
消防用設備等としての無線式の機器については、その開発、応用が始まったばかりであり、今後の技術開発やさらなるニーズに応じて、消防庁としても柔軟に対応していく必要があると考えています。

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