2 災害別対策
(1)洪水
平成21年7月下旬に西日本の各地で集中豪雨が発生し(平成21年7月中国・九州北部豪雨)、山口県や福岡県をはじめとする各地で浸水等の被害が発生した。また、8月上旬にも平成21年台風第9号により兵庫県や岡山県などで大きな被害が発生した。 近年、局地的大雨*2が増えている。気象庁資料によると、1時間降水量が50mm以上の大雨のアメダス1,000地点あたりの発生回数が、昭和62年(1987年)から平成9年(1997年)の平均が年間177回であったところが、平成10年(1998年)から平成20年の平均は年間239回となっており、また、1時間降水量が80mm以上の「猛烈な雨」の発生回数が、昭和62~平成9年の平均が年間11.5回であったところが平成10~20年の平均では年間18.5回と増加傾向にあり、被害が甚大化する例も増えている。
*2 局地的大雨:夏場などに大気の状態が不安定になって単独の積乱雲が発生し、一時的に雨が強まって、局地的に数十mm程度の総雨量となる現象
このため、消防庁では、平成21年8月13日付けで関係府省庁(内閣府、消防庁、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、気象庁)の連名により各都道府県に通知を発出し(以下「平成21年8月通知」という。)、主に以下の項目について要請した。 〔1〕 避難勧告等に係る発令の判断基準等を未だに定めていない市町村にあっては、「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」(平成17年3月策定。「内閣府防災情報のページ」参照 URL:http://www.bousai.go.jp/3oukyutaisaku/pdf/04_shiryou2.pdf)に沿って、避難勧告等に係る発令の判断基準等を速やかに作成すること。 〔2〕 既にガイドラインに沿った発令の判断基準等を定めている市町村にあっては、あらかじめ定めた基準に基づき適正な運用を行うとともに、現在の判断基準について再点検を行うこと。 〔3〕 その際、浸水により避難所までの歩行等が危険な状態になった場合その他不測の事態となった場合の避難のあり方についても併せて周知すること。 また、平成21年8月24日、関係府省庁の参加を得て、都道府県防災主管課長会議を行い、通知の内容等についての周知徹底を図った。
(2)土砂災害
がけ崩れ、地すべり、土石流による土砂災害はこれまでに多く発生しており、平成21年7月中国・九州北部豪雨、平成21年8月の台風第9号による大雨では、山口県、福岡県、岡山県、広島県で、土砂災害による死者が発生した。 土砂災害対策に関しては、昭和63年(1988年)に中央防災会議で決定された「土砂災害対策推進要綱」、平成13年4月に施行された「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成12年法律第57号)」及びこの法律に基づいて定められた「土砂災害防止対策基本指針」等に基づいて推進している。 また、平成21年8月通知において、以下の項目について要請した。 〔1〕 都道府県が土砂災害警戒区域を指定したときは、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第7条に基づき、地域防災計画に必要な事項(警戒区域ごとの土砂災害に関する情報の収集及び伝達、予報又は警報の発令及び伝達、避難、救助その他当該警戒区域における土砂災害を防止するために必要な警戒避難体制に関する事項)を記載し、「土砂災害警戒避難ガイドライン」に基づく必要な警戒避難体制に関する事項を定めること。 〔2〕 特に災害時要援護者関連施設については、当該施設の利用者の円滑な避難が行われるよう土砂災害に関する情報の伝達方法を定めること。 〔3〕 都道府県から市町村に通知される土砂災害警戒情報について、避難勧告等の発令にあたり重要な判断材料にすること。 〔4〕 土砂災害に対する地域防災力の強化を図ること。 これらについても、平成21年8月24日都道府県防災主管課長会議において、周知徹底を図った。
(3)高潮
平成11年(1999年)9月に熊本県不知火海岸で高潮の被害により12人の死者が発生したこと等を踏まえ、消防庁では、平成13年3月に内閣府、農林水産省、国土交通省等と共同で、高潮対策強化マニュアルを策定した。 また、「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」(平成17年3月策定)では、水害、土砂災害とともに、高潮災害についても、避難勧告等の発令基準の策定等の方法について示し、各市町村における具体的判断基準の策定を要請しているところである。
(4)竜巻・突風
竜巻や突風による災害は全国各地で発生しており、平成18年9月には宮崎県延岡市で発生した竜巻により3人の死者が発生し、同年11月に北海道佐呂間町で発生した竜巻では9人が犠牲となっている。 平成21年では、7月に群馬県館林市で発生した竜巻により負傷者が発生し、多くの建物が損壊した。気象庁では、平成20年3月より、積乱雲の下で発生する竜巻、ダウンバースト(下降噴流)等による激しい突風に対して注意を呼びかける「竜巻注意情報」の発表を開始した。さらに、より詳しい情報として、竜巻など激しい突風が発生する確度をきめ細かな地域分布として表した予測情報である「竜巻発生確度ナウキャスト」を平成22年度から提供できるよう準備を進めており、事業者など気象情報の利用者、報道機関、民間気象事業者等向けの解説書「竜巻などの激しい突風に関する気象情報の利活用について」(気象庁ホームページ参照 URL:http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/toppuuinfo-rikatsuyou.pdf)を作成した。