平成21年版 消防白書

2 地域防災計画

(1)地域防災計画の修正

地域における防災の総合的な計画である地域防災計画については、既に全都道府県とほぼすべての市町村で作成されている。内容的にも、一般の防災計画と区別して特定の災害ごとに作成する団体が増加しており、平成21年4月1日現在、都道府県においては、震災対策は全団体、原子力災害対策は24団体、風水害対策は30団体、火山災害対策は16団体、林野火災対策は19団体、雪害対策は11団体が作成済みである。
地域防災計画については、災害対策基本法において、毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならないこととされている。消防庁は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、平成7年(1995年)2月に、情報の収集・伝達体制や応援体制など9項目について大規模災害も想定した地域防災計画の緊急点検を要請し、また、同年7月の防災基本計画の修正に伴い、地方公共団体に対して地域防災計画の見直しに際しての留意事項を示し、地域の実情に即した具体的かつ実践的な計画とするよう求めるとともに、当面の課題として情報の収集・伝達体制や初動体制など緊急を要する事項についての見直しを要請した。
この結果、阪神・淡路大震災以降、平成21年4月1日までに、全都道府県が阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた見直しを完了しており、また、市町村においても、ほとんどの団体が見直しに着手し、このうち1,632団体(90.7%)が見直しを完了している。
また、平成7年7月より後の防災基本計画の修正に際しても、地域防災計画の見直し及び所要の修正について、適宜要請しているところであり、平成20年度中には、都道府県27団体、市町村601団体が、地域防災計画の修正を行っている。

(2)広域防災応援体制

ア 広域防災応援体制の確立

地方公共団体間等の広域防災応援に係る制度としては、消防相互応援のほか、災害対策基本法に基づく地方公共団体の長等相互間の応援、地方防災会議の協議会の設置等がある。また、災害対策基本法においては、地方公共団体は相互応援に関する協定の締結に努めなければならないとされている。
一方、地方公共団体と国の機関等との間の広域防災応援に係る制度としては、災害対策基本法に基づく指定行政機関から地方公共団体に対する職員の派遣、自衛隊法に基づく都道府県知事等から防衛大臣等に対する部隊等の派遣の要請がある。自衛隊の災害派遣についてはこのほか、災害対策基本法に基づき市町村長が都道府県知事に対し、上記の要請をするよう求めることができる。さらに市町村長は、知事に対する要求ができない場合には、防衛大臣等に対して災害の状況等を通知することができる。
なお、平成7年10月、自衛隊法施行令の改正等により、都道府県知事等の自衛隊に対する災害派遣要請手続が簡素化され、また、自衛隊の自主派遣の判断基準が明確化された。このことを踏まえ、同月、消防庁では、災害対策における地域防災計画の修正、共同の防災訓練の実施等災害対策における自衛隊との連携の強化、要請手順の明確化など情報収集・連絡体制の確立等について地方公共団体に通知している。

イ 広域防災応援協定の締結

災害発生時において、広域防災応援を迅速かつ的確に実施するためには、関係機関とあらかじめ協議し協定を締結することなどにより、応援要請の手続、情報連絡体制、指揮体制等について具体的に定めておく必要がある。
都道府県間の広域防災応援については、阪神・淡路大震災以降、取組が進み、全国すべてのブロックで広域防災応援協定の締結又は既存協定の見直しがされた。また、その補完として他のブロックとの境界にある県間の協定も締結されている。このほか、平成8年(1996年)7月には、全国知事会で、全都道府県による応援協定が締結され、広域防災応援体制が全国レベルで整備されている。
これらの協定は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、大規模災害時における自主的な応援出動、被災県への応援を調整する役割の県をあらかじめ定める等内容面の充実が図られている。
また、市町村でも、県内の統一応援協定や県境を超えた広域的な協定の締結など広域防災応援協定に積極的に取り組む傾向にあり、平成21年4月1日現在、広域防災応援協定を有する市町村数は、1,646団体となっている。 なお、広域防災拠点の整備や広域応援にも対応した物資・資機材等の備蓄を促進するとともに、受入れ体制の整備や広域応援を含む防災訓練の実施等により、実効ある広域応援体制の整備を図っていく必要がある。

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