平成22年版 消防白書

2 火災による死者の状況

(1)火災による死者の状況

平成21年中の「火災による死者数」は1,877人で、そのうち放火自殺者、放火自殺の巻き添えとなった者及び放火殺人による死者(以下「放火自殺者等」という。)を除いた死者数は1,300人と前年(1,419人)に比べ119人(8.4%)減少しており、1,546人を記録した平成17年以降おおむね減少傾向となっている。
また、負傷者数は7,654人と前年(7,998人)に比べ344人(4.3%)減少しており、8,850人を記録した平成17年以降減少傾向となっている(第1―1―3図)。

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ア 1日当たりの火災による死者数は5.1人

平成21年中の1日当たりの火災による死者数は5.1人となっている(第1―1―2表)。

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イ 火災による死者数は、人口10万人当たり1.48人

火災による死者の状況を都道府県別にみると、前年と同様に東京都が134人で最も多く、次いで大阪府が107人、愛知県が104人の順となっている。一方、死者が最も少ないのは、福井県、鳥取県で4人、次いで島根県で9人の順となっている。
これを人口10万人当たりの火災による死者数で比較すると、最も多いのは岩手県で3.76人、最も少ないのは福井県で0.49人となっている。
なお、平成21年中の人口10万人当たりの火災による死者数は、全国平均で1.48人となっている(第1―1―8表)。

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ウ 火災による死者は1月から3月及び12月に多く発生

平成21年中の火災による死者発生状況を月別にみると、例年、火気を使用する機会が多い1月から3月及び12月にかけて多くなっており、平成21年中も、1月から3月及び12月の火災による死者数の平均は月に225.5人(年間の月平均は156.4人)に上っており、この4か月間に年間の火災による死者数の48.1%に当たる902人の死者が発生している(第1―1―4図、附属資料10)。

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エ 22時から翌朝6時までの時間帯の火災で多くの死者が発生

平成21年中の火災100件当たりの死者発生状況を時間帯別にみると、22時から翌朝6時までの時間帯で多くなっており、同時間帯の火災100件当たりの死者数の平均は6.8人で、全時間帯の平均3.7人の1.84倍となっている(第1―1―5図、附属資料11)。

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オ 死因は火傷、次いで一酸化炭素中毒・窒息が多い

平成21年中の火災による死因は、火傷が571人(30.4%)と最も多く、次いで一酸化炭素中毒・窒息が565人(30.1%)となっている(第1―1―9表)。

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カ 逃げ遅れによる死者が55.8%

死亡に至った経過をみると、平成21年中の火災による死者数(放火自殺者等を除く。)1,300人のうち、逃げ遅れが725人で55.8%を占めている。その中でも「発見が遅れ、気付いた時は火煙が回り、既に逃げ道がなかったと思われるもの(全く気付かなかった場合を含む。)」が249人と最も多く、全体の19.2%を占めている(第1―1―6図、附属資料12)。

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キ 高齢者の死者が59.8%

火災による死者数(放火自殺者等を除く。)を年齢別にみると、65歳以上の高齢者が777人(59.8%)を占めており、特に81歳以上が338人(26.0%)と極めて多くなっている(第1―1―7図、附属資料13)。

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また、人口10万人当たりの死者数(放火自殺者等を除く。)は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、特に81歳以上の階層では、全年齢層における平均1.03人に比べ4.76倍となっている。

ク 放火自殺者等は、火災による死者の総数の27.9%

平成21年中の放火自殺者等は577人となっており、これは、火災による死者の総数(1,877人)の30.7%(前年27.9%)を占めている(第1―1―3図)。

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また、これを年齢別・性別にみると、特に男性の56歳~60歳の階層が61人と最も多くなっている(第1―1―8図、附属資料13)。

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(2)建物火災による死者の状況

ア 建物火災による死者は、死者総数の72.0%

平成21年中の建物火災による死者数は1,352人で、火災による死者の総数に対する比率は72.0%となっている。
また、建物火災による負傷者は6,594人で、火災による負傷者の総数に対する比率は86.2%となっており、火災による死傷者の多くが建物火災により発生している(第1―1―10表)。

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イ 建物火災のうち、全焼による死者は759人

平成21年中の建物火災による死者1,352人について、建物焼損程度別の死者発生状況をみると、全焼の場合が759人(死者の出た火災1件当たり1.16人)で56.1%を占めている(第1―1―9図、附属資料15)。

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ウ 建物火災による死者の88.8%が住宅で発生

平成21年中の建物火災による死者1,352人について、建物用途別の発生状況をみると、住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅をいう。以下本節において、ことわりのない限り同じ。)での死者は1,201人で、建物火災による死者の88.8%を占めている(第1―1―10図、附属資料19)。

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また、死因別では一酸化炭素中毒・窒息による死者が554人(41.0%)で最も多く、次いで、火傷による死者が461人(34.1%)となっている(第1―1―11図、附属資料16)。

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(3)住宅火災による死者の状況

ア 住宅用火災警報器の普及とともに住宅火災の死者は減少

住宅の火災による死者(放火自殺者等を除く。)は、1,220人を記録した平成17年以降減少傾向が続いている。平成18年6月には、全ての住宅に住宅用火災警報器の設置及び維持を義務付ける改正消防法が施行されており、全国の消防本部等において、既存住宅への設置が全国で義務化される平成23年6月に向け、設置を強力に推進しているところである。死者数の推移に係る統計資料から住宅用火災警報器の設置効果を分析するには、中長期的な推移による詳細分析が必要であるが、特に市町村条例による既存住宅への設置義務化の適用時期*2を本格的に迎え始めた平成21年中の住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)は1,023人と前年(1,123人)から急減(8.9%減)しており、住宅用火災警報器の普及が、死者数の減少に寄与してきていることが推測される(住宅用火災警報器の設置効果についてはP.58を参照。)。

*2 市町村条例による住宅用火災警報器の設置義務化は、世帯シェアで平成20年6月には約25%の地域、平成21年6月には約40%の地域で適用

また、このうち65歳以上の高齢者は628人で、前年に比べ82人(11.5%)減少しているものの住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)の61.4%を占めており、2年連続で6割を超えている(第1―1―12図)。

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イ 死者発生は高齢者層で著しく高い

平成21年中の住宅火災による年齢階層別の人口10万人当たりの死者発生数(放火自殺者等を除く。)は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、特に81歳以上の階層では、全年齢階層における平均0.81人に比べ5.1倍となっている(第1―1―13図)。

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ウ たばこを発火源とした火災による死者が18.9%

平成21年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を発火源別にみると、たばこによるものが193人(18.9%)で最も多く、次いでストーブ104人(10.2%)、こんろ67人(6.5%)の順(不明を除く。)となっている(第1―1―14図)。

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エ 寝具類に着火した火災での死者が多い

平成21年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を着火物(発火源から最初に着火した物)別にみると、寝具類に着火した火災による死者が160人(15.6%)で最も多く、次いで衣類75人(7.3%)、屑類54人(5.3%)の順(不明を除く。)となっている(第1―1―15図)。

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オ 22時から翌朝6時までの時間帯で多くの死者が発生

平成21年中の時間帯別の住宅火災の死者(放火自殺者等を除く。)を時間帯別にみると、22時から翌朝6時までの時間帯の平均は119.3人で、全時間帯の平均85.3人の1.4倍となっている(第1―1―16図、附属資料17)。

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カ 逃げ遅れによる死者が58.9%と最も多い

平成21年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を死に至った経過の発生状況別にみると、逃げ遅れが603人(全体の58.9%)と最も多くなっている(第1―1―17図)。

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