平成30年版 消防白書

2.夏期における熱中症による救急搬送人員の調査

(1)調査の趣旨と概要

平成19年8月、熊谷(埼玉県)及び多治見(岐阜県)において最高気温40.9°Cが記録され、熱中症に対する社会的関心が高まったことを契機に、政府一丸となった熱中症予防対策の一環として、消防庁は平成20年度から全国の消防本部に対し熱中症による救急搬送人員の調査を実施している。
本調査は、熱中症の救急搬送人員が増加する時期に行っており、調査結果は、速報値として週ごとにホームページ上に公表するとともに、月ごとの集計結果とその分析結果についても確定値として公表している。
調査は、平成20年度及び21年度は7月から9月までの期間で実施し、平成22年度から26年度までは6月から、平成27年度以降は5月からと調査開始月を前倒しし、調査期間を延長して実施している。
また、調査項目も、平成29年度からは、年齢区分、傷病程度に加えて、発生場所を追加し、拡大して調査を実施している。
熱中症による救急搬送人員調査の目的は、全国の熱中症による救急搬送の実態を明らかにし、メディア及び研究機関を含む関係機関、更に国民に情報提供することにより、熱中症予防の普及啓発活動の推進及び科学的知見の発展に寄与することで、熱中症及び熱中症の合併症、その他の救急疾患から国民の生命と安全を守ることである。

(2)平成30年度の調査結果

平成30年5月から9月までにおける全国の熱中症による救急搬送人員は9万5,137人、死亡者数は160人となった。調査期間を5月から9月までとした平成27年以降、熱中症による救急搬送人員は5万人程度で推移していたが、平成30年は対前年比79.6%増となり、大幅に増加した(特集10-1図、特集10-2図)。

特集10-1図 平成30年の都道府県別熱中症による救急搬送状況

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特集10-1図 消防用機器等が日本規格に適合する旨の証明書の画像

(備考)調査期間:平成30年5月から9月まで

特集10-2図 平成30年の週別熱中症による救急搬送状況

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特集10-2図 平成30年の週別熱中症による救急搬送状況の画像

特に7月は、北・東・西日本の月平均気温がかなり高く、東日本では7月として1946年の統計開始以来第1位、西日本では第2位の高温となり、7月中の熱中症による救急搬送人員についても5万4,220人、死亡者数133人と、1か月の熱中症による救急搬送人員、死亡者数として、平成20年の調査開始以降過去最多となった。
平成30年5月から9月までの間における熱中症による救急搬送人員を年齢区分別にみると、高齢者(満65歳以上)が4万5,781人(48.1%)で最も多く、次いで成人(満18歳以上満65歳未満)が3万5,189人(37.0%)、少年(満7歳以上満18歳未満)が1万3,192人(13.9%)となっている。初診時における傷病程度別にみると、軽症(外来診療)が6万2,158人(65.3%)で最も多く、次いで中等症(入院診療)が3万435人(32.0%)、重症(長期入院)が2,061人(2.2%)、死亡が160人(0.2%)となっている(特集10-1表)。
発生場所ごとの項目別にみると、住居が3万8,366人(40.3%)で最も多く、次いで道路が1万2,774人(13.4%)、公衆(屋外)が1万2,185人(12.8%)、道路工事現場、工場、作業所等の仕事場<1>が1万279人(10.8%)となっている(特集10-1表)。

特集10-1表 熱中症による救急搬送状況の年別推移(平成25年~30年)

特集10-1表 熱中症による救急搬送状況の年別推移(平成25年~30年)
特集10-1表 熱中症による救急搬送状況の年別推移(平成25年~30年)

(備考)
1 小数点第二位を四捨五入のため、合計等が一致しない場合がある。
2 平成25年~26年は6月~9月、平成27年~30年は5月~9月の搬送人員
3 年齢区分は次によっている。
 (1) 新生児 生後28日未満の者
 (2) 乳幼児 生後28日以上満7歳未満の者
 (3) 少年 満7歳以上満18歳未満の者
 (4) 成人 満18歳以上満65歳未満の者
 (5) 高齢者 満65歳以上の者
4 初診時における傷病程度は次によっている。
 (1) 死亡 初診時において死亡が確認されたもの
 (2) 重症(長期入院) 傷病の程度が3週間以上の入院加療を必要とするもの
 (3) 中等症(入院診療) 傷病程度が重症または軽症以外のもの
 (4) 軽症(外来診療) 傷病程度が入院加療を必要としないもの
 (5) その他 医師の診断がないもの及び傷病程度が判明しないもの、その他の場所へ搬送したのもの
 ※なお、傷病程度は入院加療の必要程度を基準に区分しているため、軽症の中には早期に病院での治療が必要だったものや通院による治療が必要だったものも含まれる。 5 発生場所は次によっている。
 (1) 住居 敷地内全ての場所を含む
 (2) 仕事場<1> 道路工事現場、工場、作業所等
 (3) 仕事場<2> 田畑、森林、海、川等(農・畜・水産作業を行っている場合のみ)
 (4) 教育機関 幼稚園、保育園、小学校、中学校、高等学校、専門学校、大学等
 (5) 公衆(屋内)不特定者が出入りする場所の屋内部分(劇場、コンサート会場、飲食店、百貨店、病院、公衆浴場、駅(地下ホーム)等)
 (6) 公衆(屋外)不特定者が出入りする場所の屋外部分(競技場、各対象物の屋外駐車場、野外コンサート会場、駅(屋外ホーム)等)
 (7) 道路 一般道路、歩道、有料道路、高速道路等
 (8) その他 上記に該当しない項目

都道府県別人口10万人当たりの救急搬送人員は岡山県が最も多く119.49人で、次いで群馬県108.00人、岐阜県106.50人、奈良県105.11人、三重県104.96人となり、対前年の増加率では、栃木県が最も大きく対前年比148.1%増で、次いで群馬県141.6%増、岐阜県140.7%増、東京都134.5%増、宮城県130.2%増となった(特集10-3図)。

特集10-3図 平成30年の都道府県別人口10万人当たりの熱中症による救急搬送状況

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特集10-3図 平成30年の都道府県別人口10万人当たりの熱中症による救急搬送状況の画像

(備考)
1 平成27年国勢調査の各都道府県人口を基に算出
2 調査期間:平成30年5月から9月まで

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