東日本大震災に学ぶ
3.釜石の奇跡

岩手県の釜石市では、約1,300人もの人が亡くなったり行方がわからなくなったりしました。
大槌湾に面した鵜住居地区も、津波で壊滅状態となりました。しかし、この地区の鵜住居小学校と釜石東中学校にいた児童・生徒約570人は、全員無事に避難することができました。
これは「釜石の奇跡」とよばれています。

では、児童・生徒は、どのようにして無事に避難することができたのでしょうか。

(1)鵜住居小学校では、地震直後、まず校舎の3階に児童が集まりました。ところが、3階に集まり始めたころ、
(2)隣の釜石東中学校では生徒が校庭に駆け出していました。
(3)これを見た小学校の児童は、日ごろから釜石東中学校と行っていた合同訓練を思い出し、自らの判断で校庭に駆け出しました。その後、児童・生徒は約500m先の高台にあるグループホーム「ございしょの里」まで避難しましたが、建物の裏の崖が崩れるのを見た生徒が教師にもっと高いところに避難しようと伝え、
(4)さらに高台の介護福祉施設「やまざき機能訓練デイサービスセンター」まで避難しました。
(5)このあと、津波が堤防を越えたという消防団員や地域の人の声に反応し、子どもたちはさらに高台の石材店までかけのぼりました。
(6)このあと学校やまちは津波にのまれてしまいましたが、児童・生徒は全員、無事に避難することができました。

写真はこの日、小学生と中学生がいっしょに避難している様子を地域住民の方が撮影したものです。

「釜石の奇跡」は、子どもたちが、単に運が良かったからというものではなく、この地域で日ごろから行われていた防災教育を学んだ子どもたちが自分たちの普段から行っている行動を当たり前に実践した結果が起こしたものです。
子どもたちは、自らの手で登下校時の避難計画を立て、津波の脅威を学ぶため、年間5~10数時間の防災授業を受けていました。
また、年に1回、鵜住居小学校と釜石東中学校の合同訓練が実施され、「小学生を先導する」「まず高台に逃げる」という教えも徹底されていました。
そして子どもたちは、次の「避難3原則」を徹底して身につけていたのです。
①想定にとらわれない
②状況下において最善をつくす
③率先避難者になる

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