法令

ナトリウム・硫黄電池を設置する危険物施設の技術上の基準等について

消防危第53号
平成11年6月2日

各都道府県消防主管部長 殿

消防庁危険物規制課長

近年、従来の蓄電池と比較して高い電力貯蔵能力を有するナトリウム・硫黄電池が開発され、電力負荷平準化のための電力貯蔵用の蓄電池として実用化段階になってきているところである。当該電池は、内部に第二類の危険物である硫黄と第三類の危険物であるナトリウムを用いているため、取り扱う危険物の数量が指定数量以上となる場合には、危険物の一般取扱所に該当するものであるが、密閉した単電池を複数組み合わせた電池(以下「モジュール電池」という。)として使用されるものであり、高い安全性を有することが確認されているところである。
このため、今般、ナトリウム・硫黄電池を設置する一般取扱所(以下「ナトリウム・硫黄電池施設」という。)のうち、一定の要件に適合するものについては、下記のとおり、位置、構造及び設備の技術上の基準の特例を適用して差し支えないこととしたので通知する。
貴職におかれては、下記事項に十分留意の上、その運用に遺憾のないよう配慮されるとともに、貴管内の市町村に対してもこの旨周知され、よろしくご指導願いたい。

第1 ナトリウム・硫黄電池施設に基準の特例を適用する要件

ナトリウム・硫黄電池施設に基準の特例を適用する要件は、次のとおりである。

  1. 当該施設に使用するナトリウム・硫黄電池は、密閉構造の単電池を組み合わせてモジュール電池とした構造のもので、別添に掲げる火災安全性能を有するものであること。
  2. 当該施設には、ナトリウム・硫黄電池及び関連する電気設備等(直交変換装置、変圧器、遮断機、開閉器、直交変換制御装置等)以外の設備等を設置しないこと。

第2 ナトリウム・硫黄電池施設に係る位置、構造及び設備の技術上の基準の特例

第1に定める要件に適合するナトリウム・硫黄電池施設においては、次の位置、構造及び設備の技術上の基準の特例を適用して差し支えないこと。

  1. ナトリウム・硫黄電池を専用の建築物に設置する施設の基準の特例
    ナトリウム・硫黄電池施設のうち、その位置、構造及び設備が次の(1)及び(2)に掲げる基準に適合するものについては、令第19条第1項において準用する令第9条第1項の基準のうち第1号、第2号及び第4号並びに令第20条第1項の規定は適用しないこととして差し支えないこと。
    (1) 保有空地
    ナトリウム・硫黄電池施設の建築物が壁、柱、床、はり及び屋根を耐火構造とした建築物以外の建築物である場合には、ナトリウム・硫黄電池施設の建築物の周囲に3m以上の幅(当該建築物の外壁から3m未満の場所に防火上有効な塀を設ける場合には、当該塀までの幅)の空地を保有すること。
    (2) 消火設備
    次の要件に適合すること。
    ア 設置される電気設備の消火に適応する第5種の消火設備をナトリウム・硫黄電 池施設の床面積100平方メートル以下ごとに1個設置していること。
    イ ナトリウム・硫黄電池施設の床面積が200平方メートル以上となる場合には、 設置される電気設備の消火に適応する第3種の消火設備を設置していること。
  2. ナトリウム・硫黄電池を建築物の一部に設置する施設の基準の特例
    ナトリウム・硫黄電池施設の範囲を建築物の一部に設ける室に限る場合、当該施設のうち、その位置、構造及び設備が次の(1)から(3)に掲げる基準に適合するものについては、令第19条第1項において準用する令第9条第1項の基準のうち第1号、第2号及び第4号から第8号まで並びに令第20条第1項の規定は適用しないこととして差し支えないこと。
    (1) 建築物の構造
    ナトリウム・硫黄電池を設置する室は、壁、柱、床、はり及び屋根(上階がある場合には、上階の床)を耐火構造とすること。
    (2) 窓及び出入口
    ナトリウム・硫黄電池を設置する室の窓及び出入口には、甲種防火戸又は乙種防火戸を設けること。ただし、延焼のおそれのある外壁及び当該室以外の部分との隔壁には、出入口以外の開口部を設けないこととし、当該出入口には、随時開けることができる自動閉鎖の甲種防火戸を設けること。
    また、当該室の窓又は出入口にガラスを用いる場合は、網入りガラスとすること。
    (3) 消火設備
    次の要件に適合すること。
    ア 設置される電気設備の消火に適応する第5種の消火設備をナトリウム・硫黄電 池施設の床面積100平方メートル以下ごとに1個設置していること。
    イ ナトリウム・硫黄電池施設の床面積が200平方メートル以上となる場合には、 設置される電気設備の消火に適応する第3種の消火設備を設置していること。

第3 危険物取扱者等

  1. 危険物取扱者による危険物の取扱い等
    ナトリウム・硫黄電池施設におけるナトリウム・硫黄電池の監視、制御等は危険物の取扱いに該当するものであり、法第13条第3項の規定に従って行うことが必要であること。
    第1に定める要件に適合するナトリウム・硫黄電池施設においては、ナトリウム・硫黄電池の監視、制御等は、当該施設の所在する場所と異なる場所において行って差し支えないこと。この場合において、監視、制御等が当該施設の所在する市町村の区域外において行われるときには、当該施設が設置される区域を管轄する市町村長等は、当該電池の監視、制御等をする施設の設置される区域を管轄する市町村長(消防本部及び消防署を置く市町村以外の区域に設置される場合には、当該区域を管轄する都道府県知事)と必要に応じ情報交換等を行う必要があること。
    また、ナトリウム・硫黄電池施設の外部の見やすい場所に緊急連絡先等を掲示しておくとともに、緊急時等に危険物取扱者等が必要な対応を速やかにとれるよう連絡体制等を整備すること。
  2. 予防規程
    予防規程が必要となるナトリウム・硫黄電池施設においては、次の事項を予防規程に明確にしておくこと。
    (1) ナトリウム・硫黄電池の監視、制御等を行う場所(則第60条の2第1項第6号関係)
    (2) ナトリウム・硫黄電池の監視、制御等を行う体制(則第60条の2第1項第6号関係)
    (3) ナトリウム・硫黄電池施設における火災等の緊急時における連絡体制及び対応体制(則第60条の2第1項第11号関係)

第4 その他

第1の1に掲げるナトリウム・硫黄電池の安全性能については、危険物保安技術協会において試験確認業務を実施することとしていること。

凡例
法:消防法(昭和23年法律第186号)
令:危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)
則:危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)

別添

ナトリウム・硫黄電池に要求される火災安全性能

1 単電池

  1. 単電池の過充電に対する安全性
    充電末(完全に充電した状態をいう。)の単電池をさらに充電し、過充電により電解質が破損した場合においても、危険物が単電池の外部へ漏えいしないこと。
  2. 単電池の短絡に対する安全性
    単電池に短絡が発生し、過大な電流が流れた場合においても、単電池が破壊せず、危険物が単電池の外部へ漏えいしないこと。
  3. 単電池の昇降温に対する安全性
    単電池を放電末(完全に放電した状態をいう。)の状態で運転温度から室温まで降温し、再度運転温度まで昇温させた場合に危険物が単電池の外部へ漏えいしないこと。

2 モジュール電池

  1. モジュール電池の短絡に対する安全性
    モジュール電池の外部で短絡が発生した場合に、モジュール電池内のヒューズが速やかに遮断され、短絡が安全に終了し、危険物がモジュール電池の外部へ漏えいしないこと。
  2. モジュール電池の防火性
    モジュール電池の外部で火災が発生し、火炎にさらされた場合にあっても、危険物がモジュール電池の外部へ漏えいしないこと。
  3. モジュール電池の耐浸水性
    運転温度のモジュール電池が浸水した場合にあっても、単電池が破損せず、危険物がモジュール電池の外部へ漏えいしないこと。
  4. モジュール電池の自己消火性
    モジュール電池の内部で、単電池を強制的に破壊、発火させた場合、周囲の単電池に破壊が連鎖拡大せず、自己消火するとともに、危険物がモジュール電池の外部に漏えいしないこと。
  5. モジュール電池の構造的強度
    モジュール電池が落下等の外的衝撃を受ける場合において、単電池が破壊せず、危険物がモジュール電池の外部へ漏えいしないこと。

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