防火対策の推進等

『暖房器具火災の真実』-高齢者の生活実態を踏まえた火災検証実験-(8分ビデオ)テキスト版

【プロローグ】

ナレーション:恐ろしい火災! 毎年、火災による高齢者の死亡事故が数多く発生しています。今、高齢者がいる世帯は、全世帯数の約40%...また、高齢者だけで住まわれている世帯数は1千万世帯を超え、そのうち、ひとり住まいは435万世帯を数えています。では、なぜ、高齢者の方の火災死亡事故が増えているのでしょうか?専門家に伺ってみました。

【日本火災学会会長 関澤愛教授(東京理科大学大学院 国際火災科学研究科)インタビュー】

関澤先生:火災による死者の6割以上が65歳以上の高齢者です。 火災で多くの高齢者の方が亡くなっているのには、理由がいくつかあります。 ひとつは、体力とか反応の素早さの問題ですね。 過去の火災統計を見ますと、若い人や健常者は、発見の遅れによって火災で亡くなっているのに対して、高齢者の場合は、体力や判断力の不足、逃げようとしたけれども逃げ切れなかった、あるいは衣服に火が着く「着衣着火」などによって、多くの方が亡くなっています。 もうひとつは、高齢者特有の暮らし方です。 高齢者は、使い慣れたこんろとか、裸火型の暖房器具などの、比較的火災危険の高い、古いタイプの器具を使い続ける傾向があります。 また、動くのがおっくうになり、自分の居場所の周りに、多くのものを集めがちになります。 このように、高齢者は火災の発生しやすい、あるいは拡大しやすい環境に住んでいることが多いと言えます。

【実験1 高齢者住宅環境の再現実験(こたつからの発火)】

毎年、こたつやストーブなど暖房器具が原因の死亡火災事故が報告されています。
こたつからの発火で、火災に至るケースを想定した実験です。
まずは、電気こたつからの発火メカニズムを検証してみます。
こたつから発火する場合の原因としては、洗濯物をこたつの中に入れて乾かそうとして、ヒーターに触れてしまったり、また、コードやスイッチが経年劣化によりショートして、発火するケースなどが考えられます。
スイッチを入れてから、およそ5分。 うっすらと煙が上がってきました。
すぐに火の手が上がるわけではありませんが、この状態で煙を吸い込んでしまう事で一酸化炭素中毒になり、重篤な事態に至るケースもあります。
煙が出てきてから28分経過。 炎が見えました。 洗濯物に着火したようです。
では、こたつから発火した火災が、着火後は部屋の中でどのように拡がっていくのでしょうか?
着火しました。
着火から1分経過。
2分経過。 炎が立ち上がり、煙が部屋に充満してきました。
3分を過ぎて、 火元のこたつから上がった炎は、もう、壁に吊るされた衣類に燃え移って行きます。
着火から4分を経過する頃には、天井まで火の手が上がっています。
実際の部屋に近い、壁の開放されていない居室空間の実験でも、着火から約4分で、室内は煙で充満し、ほぼ視界が遮られていることが分ります。
こうなると、さらに避難が困難になると考えられるでしょう。
実験では、炎が立ち上がって、天井に届いてから約1分の間で部屋全体に火が回り、私たちの想像をはるかに超えるスピードで進展する「フラッシュオーバー現象」が確認できました。
このように、ものの5分間ほどで、恐ろしい災害になってしまうわけです。

【実験2 高齢者住宅環境の再現実験(電気ストーブから発火の場合)】

次に、暖房器具として、電気ストーブを利用している部屋を再現し、実験を行いました。
寝返りなどによって、ふとんが電気ストーブにかかってしまい火災に至るケースを想定しました。
着火してしばらく、くすぶった状態が続きます。
23分経過。 火の手が上がりました。
さらに、室内では着火後には、どの様に火災が拡がるのかを、実証実験しました。
火災発生。
3分経過。 部屋干しされた衣服へ燃え移りました。
炎が天井に達しました。 炎が見えてから約4分です。
4分30秒。 一気に部屋中に火が回ります。 こうなると避難は非常に難しくなります。
5分経過。 ご覧のように、火の勢いは1分~2分の間で一気に変化します。

【エピローグ】

【再び 関澤愛氏(東京理科大学教授)インタビュー】
関澤先生:福祉施設でも、一般の住宅でも、高齢者が寝起きしている6畳や8畳の大きさの部屋では、実験映像で見たようにですね、火災が発生して炎が天井に届くようになると、1、2分と言う短い間に部屋全体が炎に包まれ,フラッシュオーバーと言う、大変危険な状態になります。 過去の火災統計を調べてみると、火災で亡くなった方の出火原因は、年齢によって違いがあり、高齢者は暖房器具で多くの方が亡くなっています。 高齢者の場合は、いったん火災が発生すると、とっさに消火したり逃げたりすることが困難です。 高齢者を火災から守るためには、火災そのものに遭遇しないようにすること... すなわち使っている器具を安全化して、高齢者の暮らしから火災危険を少しでも減らすことが大切です。
ナレーション:ますます、高齢化社会に向かう、我が国。 一人ひとりが火災予防への意識を高め、高齢者の住環境を、まずは家族や身近な人が、安全で快適に整えていくことで、高齢者の方々を火災事故に遭遇させないように、努めて行かねばならないのです。

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