油流出事故対策(監修:独立行政法人 海上災害防止センター)
3.流出油のゆくえ

 海上に流出した油は、最初は蒸発しながら拡散していきます。
 ガソリンや軽油などの軽質燃料油は揮発成分が多いので、短時間の内に蒸発し消滅するため通常は防除作業の必要はありません。
 しかし、蒸発したガスによる中毒・火災・爆発等の危険性があるのですぐに、現場に接近することは非常に危険です。どんな種類の油が流出したかを確認し、性状を把握してから対応することが肝要です。
 流出油は時間の経過とともに、乳化、分散、酸化、分解などを起こします。

 沿岸部でのタンカー事故では、油流出、すなわち海岸被害となるため、世間の注目を集めますが、実は海洋への油の流出は、事故によるものは全体の約10パーセントであり、残りは陸上から海洋へ排出される生活廃水や産業活動に伴うものです。にもかかわらず海洋汚染が問題とならないのは、海水の自然浄化作用により油が分解されて海水に還元されるからです。
流出油は時間の差はありますが、バクテリアによる消化分解作用と海水や空気中の酸素による酸化作用により海水に還元されます。
 流出事故の場合は短時間に大量の油が流出されるため、この自然浄化作用が追付かず汚染被害が発生します。

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