油流出事故対策(監修:独立行政法人 海上災害防止センター)
10.油処理剤の作用

 かつて油処理剤は「中和剤」と呼ばれ、あたかも油を化学的に別の物質に変化させるような誤った認識を与えていました。

 油処理剤は、油を微粒子化し海面付近の水中に分散させ、表面積を大きくして、微生物や酸素により自然浄化作用を促進する薬剤です。微粒子化した油は沈殿することなく、海岸・海面付近の生物への毒性、海鳥などへの付着の影響を抑制します。

 油処理剤の成分である界面活性剤は、一端が親油性を持ち、他端が親水性を持つ分子構成となっています。
 油処理剤と油が混合すると油と水の界面に界面活性剤が並び界面油膜が破断しやすい状態となり、攪拌エネルギーを加えるだけ微細な油滴となって水中に分散します。

 微粒子化した油滴の水中での上昇速度は遅く、元の位置から約3メートルの範囲で浮遊し、油滴はさらに界面活性剤に包まれて安定するため油滴同士が再結合することもありません。

 従来の油処理剤は散布後に強力な攪拌が必要でしたが、平成11年末から使用されはじめた自己攪拌型油処理剤、いわゆるセルフミキシング型は界面張力を低下させる能力が極めて大きく、波の作用などで油を自然に分散します。
 流出油の性状も変化することから、油処理剤を使用する際はサンプリングにより有効性を確認する必要があります。
 しかしながら、高粘度化した油には油処理剤が浸透しないため、分散効果を発揮しません。また油処理剤は海水などで希釈すると効果が格段に低下するため、原液散布と散布器の使用が原則です。

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