風害対策(監修:丸山敬 京都大学防災研究所准教授)
6.建物の被害

 このグラフは台風による強風で全壊した家屋の割合と近くで観測された最大瞬間風速の関係を示したものです。
 被害の割合の変化を見ると、近年になるほど被害率は小さくなり、最近の建物の風に対する強度が上がってきていることが判ります。
 一方、近年の台風でも依然として被害は発生しており、最大瞬間風速が秒速30mを超えると被害が出始めることがわかります。
 自然風では、瞬間風速が平均風速の1.5から2倍程度になるので、平均風速でいうと風速15m/sから20m/sを超えると家屋に致命的な被害が出始めることを示しています。
 気象庁から発表される台風情報では、平均風速15m/s以上の風が吹く領域を強風域としていますので、この領域に入る地域ではとくに警戒が必要です。

 さて、建物の被害としては屋根の被害がもっとも多く、開口部、内部、外壁等の被害が続きます。
 屋根の被害については次のセッションで詳しく説明しますので、ここではそれ以外の被害について見てみましょう。
 開口部の被害としては、窓の破損が最も多くなります。
 窓ガラスは、風圧力によって割れる場合もありますが、飛来物によって割れるケースがほとんどです。
 また、ガラスの強度は充分であっても、サッシの強度が弱いと枠ごと壊れる場合があります。
 そして、いったん開口部が被害を受けると、吹き込んだ風や雨により、建物内部の家財が飛ばされたり、濡れたりして被害を受けます。
 また、室内の天井が落ちることもあります。
 さらに、建物の外部でも、壁などが剥落する被害を受けることがあります。
 その他、建物の周囲にある構造物や樹木が風で倒され、建物が被害を受ける場合があります。
 とくに、神社やお寺など古い建物の周りには古木が生えている場合がありますが、古い木は背が高く風の力を大きく受ける上、弱っていると風に弱いので、倒木による被害が発生します。

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