風害対策(監修:丸山敬 京都大学防災研究所准教授)
10.被害を減らすために

 強風災害によって多くの人や物に被害が出ます。
 近年、人的被害が多かったのは1991年の台風第19号で、被害者総数は約2千5百人、そのうち死者が61人にのぼり、ほとんどが強風によるものでした。
 そのときの死者の内訳を見ると50歳以上の人が多く、強風が吹いている最中に外に出て風に飛ばされたり、飛散物に当たって死亡する割合が高くなっています。
 したがって、緊急の場合以外は風が弱まったからといってすぐに外には出ず、しばらく様子を見てから屋外の作業を行ってください。また、台風の通過時には「吹き返し」や「プレッシャーディップ」のように、いったん風が弱まった後に再び風が強くなる現象があることに注意してください。

 強風中に外に出る原因としては、雨漏りを直すために屋根に登った。割れた窓ガラスを片づけにいった。また、倒された植木や物置を直しにいった。というように、事前のメンテナンスや、補強、補修によりその原因を取り除くことができる場合が大半です。
 台風の場合には数日前からその進路が予想されていますので、襲来地域に当たる場合には、時間的な余裕があるうちにこれらの手当を行いましょう。
 強風災害を減らすためには、
1:被害を発生させる原因を減らす。
2:被害を防ぐための対策を講じる。
ことが必要です。
 被害の直接の原因である風をなくすことはできないので、風によって飛ばされる物を減らすことが重要になります。飛散物は、物や人に被害を及ぼす恐れがあるため、家の周りの飛びやすいものを片づけたり、飛ばないように固定しておくことが大切です。
 屋根瓦の飛散や、屋根の破損を防ぐために、できれば瓦は1枚ずつ全て屋根に留めるようにしましょう。
 薄板鋼板屋根の場合には、経年変化による劣化、留め付け部分の腐食などがないかを調べ、必要ならば補強、補修を行いましょう。
 これらの作業は台風がくる直前だけでなく、日頃のメンテナンスとしても行うよう心がけてください。
 その他、広告塔、貯水タンク、空調機、それらを覆うパネルなども飛散しないようにしっかりと固定し、メンテナンスも適切に行うことが肝心です。
 飛来物による被害を防ぐためには、開口部を守ることが第一です。
 この写真は飛来物による窓ガラスの被害を写したものですが、ルーバーのついている方の窓は割れていません。このように、雨戸やルーバーは飛来物が窓ガラスに当たるのを防ぎ、非常に効果的です。
 また、網入りガラス、合わせガラスなどを用いると、ガラス自体の破壊を防ぐだけでなく、割れた場合の飛散や、ガラス片による怪我を防ぐ効果があります。
 ただし、ガラスの強度が充分であっても、サッシの強度が弱いと枠から壊れます。
 また、サッシを留め付ける下地の強度不足や腐食などにも注意を要します。

 最後に被害が起こった場合の対応と、事前の対策についてまとめておきます。
 台風の強風では、一旦弱まった後に再び風が強くなる場合があるので、風が弱まったからといってすぐに外に出るのはやめましょう。
 怪我の治療など緊急を要する場合を除いて、風が完全に弱まったのを確認してから作業を行いましょう。
 竜巻やダウンバーストは通常その発生や接近を事前に知ることは非常に困難です。そのため、避難する余裕がないことが多く、気が付いたときにはすでに被害が出ている場合が多くあります。
 過去の竜巻による被害をみると、割れたガラス片などでけがをする場合が多いようです。したがって、強風に襲われたときは机などの物陰に避難し、動かずにやり過ごすことはもちろんのこと、強風が過ぎ去った後でもパニックにならないようにし、ガラス片などの危険物が周囲にあることを意識して慎重に行動することが大切です。
 老朽化による腐食や錆など、経時変化に伴う強度低下などによって外壁材が剥落・飛散する場合もあります。
 なかでも、公民館や学校の体育館など、大きな建物の場合には大面積の破損がおこる可能性があり、また災害時に人が多く集まっている場合があるので、大きな被害が生じる恐れがあります。
 まとめとして、建物における風害対策を表にしました。これを参考に、日頃のメンテナンスと、建物の耐風性の向上に努めてください。

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