風害対策(監修:丸山敬 京都大学防災研究所准教授)
7.屋根の被害

 まずはじめに、台風による強風で瓦が飛ばされる様子をお見せしましょう。
 強風災害を被害別にみると、圧倒的に多いのが屋根の被害です。国内で用いられる屋根葺材には瓦やスレート、金属の薄板などがありますが、最も普通に用いられているのが日本瓦です。
 日本瓦は、針金や釘などでしっかりと屋根に留められていれば、ふつうの台風程度の強風では飛びません。
 通常、軒やけらばなどの端部では、瓦は一枚ずつ屋根に留められています。しかし、屋根の中央部では1列か2列おきに留められることが多いため、風速が30m/sを超えるあたりから、留められていない瓦が飛び始めます。


 そして、一旦、瓦がめくれてしまうと、周囲の瓦は留められていても飛んでしまいます。
 この映像では、最終的に屋根の下地材である野地板(のじいた)までもが飛ばされ、屋根は大きく壊れています。
 よく見ると、画面左側の窓が壊れて風が吹き込んでいるのが判ります。このことにより、屋根は部屋の内側からも外側に押す力を受けるようになります。
 さらに、瓦が飛んでしまったために、瓦の重さによる下向きの押さえがなくなり、屋根は大きく壊れてしまったのです。  一方、画面向こう側の屋根面の瓦はほとんど飛んでいません。
 これは、瓦にはめくれやすい方向があり、図のように、瓦の左下側から風が吹く場合に最もめくれやすく、強風の方向と一致していたためです。  先ほどは瓦の飛散例を見ましたが次は薄板鋼板屋根の場合を見てみましょう。
 瓦と違って、薄板鋼板屋根は広い範囲が一気にめくれます。その結果、大きな金属板が飛ぶことになり、そのものの被害だけでなく、電線を切断したり、周囲の建物や車、人を傷つける場合があります。したがって、都市のように、建物が密集しているような場所では、薄板鋼板屋根による二次的な災害に注意が必要です。
 とくに、体育館などの広い屋根では、一枚の金属板が大きいことが多く、二次災害を拡大する恐れがあります。

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