災害情報(監修:廣井脩 東京大学大学院情報学環教授)
2-3.災害情報を巡る今後の動向 安否伝達と情報化の進展

 安否情報は、災害時に、最も切実に必要とされる情報の1つです。写真は阪神・淡路大震災の時に、市役所に張り出された張り紙ですが、情報化が進んだ現代に、なぜこのような原始的な方法が使われたのでしょうか。
 最大の原因は電話の輻輳です。安否を心配する人々が被災地に一斉に電話をかけるため、設備能力をオーバーし、電話がつながりにくくなるのです。
 その後、電話以外の通信手段も急速に普及しました。グラフは2003年5月に起きた宮城県沖の地震での疎通具合ですが、携帯電話や携帯メールもつながりにくくなっています。輻輳に対しては、災害用伝言ダイヤル(171)の設置や、携帯メールを別制御にする、などの対策がとられつつあります。有効性の高いこうしたシステムの知名度を上げ、利用を促進させることが重要です。

 一方、比較的つながりやすいインターネットにも問題はあります。停電時に使えないこと、回線が東京に集中していること、災害時の利用者が少ないことなどです。新たなメディアは可能性もありますが、経験不足ゆえの弱さもあります。新メディアの導入に当たっては慎重な検討が必要になります。

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