土砂災害対策(監修:岩松暉 鹿児島大学名誉教授)
6."土砂災害"は自然の摂理

こうしたカッコ付き"土砂災害"は何とかなくせないものでしょうか。結論から先に申し上げると、どんなに科学技術が進歩しても決してなくならないでしょう。なぜなら、地すべりや土石流のような自然現象は人類誕生以前から存在していたからです。46億年の地球の歴史に比べたら、人類の歴史500万年は無視できるほどなのです。
中学校の理科で浸食・運搬・堆積といった堆積作用について教わったことがあると思います。このうち、浸食作用のもっとも大規模なものが地すべりや崩壊です。岩石の風化が進行して土壌が形成されると、力学的に弱くなって崩れます。その肥沃な土壌が洪水で下流に供給されてこそ、平野が形成されるのです。そうして形成された平野部が人間の生活の場となり、農耕が営まれていたのです。

したがって、もしも"土砂災害"がなかったら、平野は海岸浸食によって削り去られてしまい、私たちの住むところは無くなっていたでしょう。"土砂災害"は一面では無くてはならない現象でもあります。
写真は桜島の野尻川河口ですが、土石流の土砂でわずか10数年の間に、かなり陸地の面積が増えています。

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